ホーム > 行事報告 > 平成18年・第13回 法学部会講演会 新司法試験の結果を踏まえた 法科大学院の現状と今後について 戸松秀典氏 学習院大学専門職大学院 法務研究科長

平成18年・第13回 法学部会講演会 新司法試験の結果を踏まえた 法科大学院の現状と今後について 戸松秀典氏 学習院大学専門職大学院 法務研究科長

第13回法学部同窓会
平成18年11月25日 学習院創立百周年記念会館にて

 平成18年9月21日に、新司法試験合格者の発表がありました。マスコミも大きく報道しましたが、学習院大学は15名の合格者を出し順位は19位でした。朝日新聞は旧司法試験は25位であったとのカツコ書きを付けていました。
 これを見た方々、特に学外からは、「学習院は頑張っている」と言われました。従来の試験では、わずかしか合格していませんでしたから、画期的なことだとの評価を得ました。
 しかし、私は、法務研究科長として、3月に50名の修了者を出し、全員合格との信念で修了させましたので、不本意な結果ではあります。
 我々法科大学院スタッフ全員、真剣にいろいろ分析して、今後の対応等を考えていますのでその結果を踏まえて法科大学院の現状と今後についてお話しいたします。
 法科大学院の使命は、わが国は西欧と比べて法曹人口が少ないのでそれを増加させるとともに、戦後行って来た司法試験を通しての法曹育成過程にいろいろな病理現象が生じ、制度疲労まで起こしているのでそれを改革するということです。
 司法試験予備校で学んで試験に合格した人が、2年間の司法研修所の修習を経て法曹になるのですが、十分な資質をもっているかどうかが疑われることが多くなってきました。
 一回限りの試験による選抜ではなく、きちんとした教育をする法曹育成が法科大学院で、専門職大学院という位置づけです。
 学習院大学は小規模で、財政能力上からも大きな大学院を作る訳にはいかず、いろいろ検討した結果、法学既習者50名の2年コースと、未修者15名の3年コースとに分けました。3年コースは、多様な資質を持つ優れた法曹養成が制度の趣旨のひとつですから、医師、歯科医師等の理科系の人にも法曹になってもらいたい、ということです。
 入学生達は、朝から晩まで目の色を変えて勉強しており、学部の学生に良い影響を与えています。文科省の視察での学生への聞き取り調査で、「これほど教師に対する信頼感があり、大学への愛着感を持つ法科大学院はない」との評価もいただきました。
 来年度からは、法科大学院の中に法務研究所を設け、いろいろな問題の受託研究を引き受け、その研究過程での成果を学生に還元することや、学習院に法律事務所を作ってそこで学生の実務教育をしたり関係者からの相談にも応ずるという様なことを考えています。
 また、すでに法曹資格を得て活躍している人が、法科大学院に戻ってもういちど腕を磨き直すリカレントスクールも成り立つのではないでしょうか。それらによって、法科大学院は、必要不可欠、磐石なものになると考えています。
(戸松教授講演録より抜粋・要約 文責・前田兼利法学部同窓会長)

こいけひでお/昭和60年学習院大学経済学部経営学科卒業後NHKに入局。鳥取での5年の記者生活などを経て、政治部の首相官邸担当となる。マスコミ志望は名刺1枚でだれにでも会えるから。弁論部出身。この講演後、小泉内閣は解散。9月11日の総選挙の勝利で新たに小泉内閣が誕生。

カテゴリー: 行事報告 タグ: