学習院開校五十年記念歌

林 道雄 作詞
瀬戸口籐吉作曲
昭和3年(1928)10月18日、開校50年記念祝典式において斉唱。
明治10年神田に開業してより50年。作詞は当時学生であった林 道雄。

濁りに染める人の世に

澄みて流るる一筋の

たまの小川の香りこそ

その水上の丘に住む

清き心の若人が

かざし忘れぬ桜花

水の随(ま)に随(ま)に訪(と)め来れば

山には春のいと更けて

幾十(いくそ)の星を移せども

花瓔珞(ようらく)の蔭(かげ)清く

翼(はね)うち交は(かわ)す群小鳥(こどり)

永劫(とわ)の調べを歌ふ(う)かな

あああこがれの丘の上

若き心に春去れば

真理(まこと)求むる白無垢の

冷き衣脱ぎすてて

花散る蔭(かげ)に草を敷き

緑の夢にまどろみぬ

吹く風音(かざおと)に秋づけば

星の黙示に友垣と

語らふ(う)宵の多くして

茜かがよふ(う)夕映に

晩鐘の声絶ゆる時

運命(さだめ)の小琴(おごと)かきなでき

愛陵(あいりょう)の秋にめぐり来(こ)し

今宵五十の花宴

挙げてぞ受くる盃に

更に誇らん幾歳の

栄の春を想うとき

若き血潮は燃ゆるかな