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マラヤ大学(UM)中間報告 ~権蛇千香(ごんじゃ ちか)さん

マラヤ大学(University of Malaya, Faculty of Languages and Linguistics)は、マレーシア の首都、クアラルンプールにある、マレーシアの国立大学で、国内で最も古い大学です。留学生だけで1万人を超す、規模の大きい総合大学です。
私は上記学部の大学院修士課程、English Language Study専攻の学生です。クラスメイトの約半数がマレーシア 人で、残り半数が海外からの留学生なので、インターナショナルな雰囲気です。日本人は私一人で、私の学部では授業はほぼ英語のみ(一部マレー語との2言語併用)で行われますが、留学生にはマレー語基礎クラスを履修し、合格していることが卒業の条件として求められます。
マレーシア は多民族国家であり、マレー人、中華人、インド人、その他の民族によって構成され、公用語はマレー語および英語、主要言語は公用語の他に中国語、タミル語、となります。よって、多くのマレー人が2言語以上を話すことができます。
マレーシアも多くの国同様、厳しいロックダウンを経て、現在もMCO(Movement Control Order)環境下におかれ、人々は様々なルールを遵守しながらの日常生活です。留学継続を断念しなければならないかもしれない、という不安の中、私がどのように学位取得に向けて学業を継続しているか、これまでの経験を共有させていただければと思います。
第2学期の半ばを迎えようとしていたころ、感染者の急激な増加が起こり、学期の中間にあるセメスターブレイクという休みに入ったところで、大学を含む全ての教育機関が対面での授業継続が困難となりました。UMでは通常1週間のセメスターブレイクが2ヶ月近くに長期化しました。この間、大学および教員はオンラインでの授業再開の準備を整え、無事、オンライン(Google meet他様々なプラットフォームを用いて)で全ての科目の授業が再開しました。この間、留学生の多くが帰国する、という選択を取りました。私自身もとても悩みましたが、日本の家族のアドバイスは、日本はロックダウンしていないから、マレーシアにいる方が安全では?というものでした。日本からの交換留学生たちが早々に帰国していくのを見ることは、彼らのこれまでの準備や努力を思うと同じ日本人として大変気の毒に思いました。パンデミックの中、異国に留まるという決断は不安の多いものではありましたが、授業が再開し、オンラインで先生による学生の状況確認(ローカルの学生は地元に帰省しているか、インターナショナルの学生は帰国しているかどうか)の際に、I’m staying in Malaysia.と言ったときのクラスからのモニター越しの拍手に大変励まされました。
幸い、実験などがある分野ではないため(それでもフィールドワーク、セミナーなど、貴重な学びの機会を失いました)、授業はこれまでどおり厳しく、課題の量も難易度も下がることなく、教室での授業同様、アクティブに発言を求められる気の抜けないものでした。課題はペアワークやグループワークも多いのですが、メッセージのみに頼るやりとりとなり、表情の見えない中でのコミュニケーションは、英語のスキルを別の方向から押し上げたという気がします。
私が帰国を選ばずにマレーシアに留まった理由についてもう少し書いてみたいと思います。1つは、いったん日本に帰国してしまうと、マレーシアへ再入国することが難しい状況であったこと。2つめは、必ず対面の授業は再開される、と信じていること、です。せっかく入学許可がおり、コロナで先の状況が不透明、かつ、いつ帰国という事態になるかもしれないと不安との戦いの中、学位に向けて頑張ってきたので、まだチャンスがあるならあきらめたくない、という気持ちからです。そして、3つめの最も重要な要素は、マレーシアという国を信じているから、この地で、この大学で、まだ学ぶべきことがあるから、という理由です。
当たり前のことですが、日本とマレーシアは文化が異なります。ビザの手続きや、警察など、公的なサービスも、日本での‘普通’は通用しません。しかし、人々は朗らかで、他人を気遣い、祈ってくれる、尊敬すべき優しい国民性です。多言語、多民族によって構成される、多文化国家のため、語学を学ぶにおいては、ある意味、これ以上ない環境ということができるかと思います。
終わりに、2020年の3月以降、大学での授業は再開されないままですが、高等学校までの学生たちは、対面での授業が再開するも、1週間もたたないうちにまた学校がクローズしたり、子どもたちも大変でした。この度、再々度、生徒たちは対面授業が開始の運びとなりました。感染者数がいまだ高い数値を保っている中、政府の判断による対面授業再開で、保護者の間では反対する人も多くいます。マレーシアのインターネット環境は非常に良く、多くの小中高ではオンライン授業が展開されています。子どもたちが厳戒態勢の中であっても、学校に戻れるというニュースは、大学院生である私にも大きな希望です。現在も一時帰国できない状況ではありますが、パンデミックの収束を願いながら、希望を持って過ごしていこう、多くを学んで帰ろう、と考えています。

学期の最終日には全員で写真をとります(コロナ前)