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2014/9/11 第236回月例会報告  講演:東郷和彦氏(昭35中)

第236回は、元外務省の条約局長、欧亜局長、オランダ大使等を歴任され、現在は京都産業大学教授・世界問題研究所所長及び静岡県対外関係補佐官の任についておられる東郷和彦様を講師としてお迎えし「現下の日本外交:世界史の激動と日本の針路」という演題でご講演頂いた。

心配された朝からの雨も夕方には止み、霞会館の会場には同期の方も大勢来られ126名が集まる盛況となった。

 

先生は学習院初等科から中等科に進まれ、都立日比谷高校を経て東京大学教養学科をご卒業され、外務省に入省された。

外務省退官後は

tougou

2002年 ライデン大学講師、

2003年 ライデン大学付き国際アジア研究所教授フェロー

2004年 プリンストン大学東アジア研究学部講師兼研究員

2006年 淡江大学(台湾)大学院日本研究所客員教授

2007年 カルフォルニア州立大学サンタ・バーバラ校政治学部客員教授

2007年 ソウル国立大学国際研究大学院客員教授

2008年 テンプル大学ジャパン・キャンパス客員教授

2009年 京都産業大学客員教授

2010年 4月より 京都産業大学教授・世界問題研究所所長

2011年 4月より 静岡県対外関係係補佐官

等にご就任されている。

 

演題にあるように、我が国の喫緊の課題である中国の脅威についてご講演が始まった。

中国は経済的にも軍事的にも大変大きな力をつけその力を誇示しつつ尖閣列島への侵入を始めた。

明確な計画を立てて既成事実を作りながら強力に隣接国への領有権を主張して来ている。

従来から中国とは暗黙の了解を続けながら均衡を保ってきたが、野田政権が尖閣列島を購入して以来、領海侵入の脅威が継続している。

尖閣への中国公船の侵入は、

2012年9~12月 17隻/月

2013年     15隻/月

2014年      6隻/月

となっている。

日本は、外国船が侵入してきた場合、指示に従わなくても撃沈することはない。

ロシア、韓国は、日本の船が侵入したら撃沈する。

冷戦の時代は、相互に相手を壊滅させられる核を背景にした米ソの対立が続いていた。

その中で取り分け北海道などでは日本は真面にソ連の脅威を受けていた。

その他、北朝鮮の拉致問題や瀬戸際外交等の脅威を受けたが、考えられないような行動をする理解し難い国だ。

 

尖閣の問題は、日本にだけ中国の脅威が向いており、戦争になる可能性のある怖い問題を抱えている。

彼らは、軍部の力を背景に力の外交を推し進めており、日本としても軍事力をつけなければならない状況下にある。

つまり抑止力の為に軍事力をつけ、その上で習近平主席他中国指導部に改めて尖閣問題を考えさせ対話をすることが必要となろう。

 

我が国の外交戦略(他国と仲良く付き合うこと)を、米韓露を上げてみると。

安倍総理になってからは、月1回のペースで外国を訪問している。

中国は主席と首相がいるので色々やることが出来る。

総理が外国を訪問する時は、財界や企業の要人が同行するのでその効果は大いに期待できる。

しかし、肝心の日本周辺の米韓ロとの関係が不安定化している。

 

アメリカとの関係を見ると、ピリピリしている時代と言える。

2013年12月の安倍総理の靖国神社訪問をアメリカは大変危惧している。

此処で、最も喜んだのは中国だ。

アメリカにとって最も脅威を感じる国は、中国でアメリカを脅かす存在となってきている。

21世紀半ばには、国力はアメリカを抜くとも言われている。

それだけアメリカが神経質になる理由がここにある。

アメリカにとって最大の課題は中国というのが現実だ。

尖閣問題については、アメリカは日本に自分で片づけてくれと考えている。

どうしても日本だけで処理できなくなったら、アメリカは介入するという姿勢だ。

そのためにも、今ここで中国を刺激しないで欲しいというのがアメリカの本音である。

小泉総理の時にも靖国神社訪問後は6年間、中国との首脳会談は行われなかった。

靖国問題の本質がなんであれ、今靖国に行けば中国が挑発ととることは間違いがない。

オバマ大統領は、来日した時に尖閣についての最も力強いコミュニケを発してくれたが、

そういうアメリカの利益の根本を理解しない日本との信頼関係は崩れかけている。

 

韓国とは、雰囲気がとても悪い。

戦後韓国は繰り返される学生運動で民主的な国に育ってきた。

韓国は5年毎に新政権になり政府のバックアップもあり企業は大きく成長した。

韓流もあり韓国とは良好な関係になるかと思われたが、最近になって難しい問題が次々とでてきた。

2011年韓国の憲法裁判所は、韓国政府が慰安婦の権利を守ってきていないとして違憲判決をくだした。

2012年韓国の最高裁判所は、戦時中の日本の企業は韓国人に強制労働を強いたとの理由で損害賠償の支払いを認めた。1965年の正常化交渉で、日韓の請求権問題はすべて解決済みであり、強制労働問題は明示的にとりあげ解決されているにもかかわらず、最高裁判断が続いている。これがもし、日本の269社に有罪判決が下されたら日韓関係は終わりになってしまうだろう。

2012年夏にイミュンバク大統領が竹島を訪問した。

韓国人の恨みの深さは特別なものがあるようだ。

歴史認識問題からもその深さが窺い知ることが出来る。

 

終戦後、日本でもアメリカに7年間占領された事実がある。

韓国は35年間の日本による直接統治の間には、特攻隊で死亡した人もいた。

慰安婦問題、強制労働問題等韓国側も良く考えて解決の糸口を探すことが必要だろう。

 

北方領土問題は、ロシアが誕生した時に返還のチャンスがあった。振り返ってみると、4回の山があった。

1992年   ソ連邦崩壊とロシア連邦成立の時に、ロシア側から大きな譲歩案がでてきた。

2001年   イルクーツクで戦後の日露交渉上初めて1956年の日ソ共同宣言(歯舞色丹の引き渡しを規定)と、1993年の東京宣言の二文書が文書によって確認された。

2006~09年 第一次安倍内閣の時に麻生外務大臣が国会審議で示唆した「面積の等分論」というアイデアがあった。

09年には、サハリンで麻生・メドベージェフ会談が行われ、5月にはプーチン首相が来日して森喜朗元総理、麻生総理と会談し進むと思われたが、その後の総理の「ロシアは北方4島を不法占拠」と言う発言で交渉は事実上とまった。

2012年   プーチンが大統領に選ばれる三日前にG8サミットの構成国の新聞記者を集めた記者会見で「引き分け」と言う考えが示された。 ロシアとして戦略的に、中国との関係(脅威)から日本との関係を強化したいと考えていたようだ。

安倍総理は、プーチン大統領との関係を良好に保っていたが、ウクライナ問題が勃発するや暗雲が立ち込めて来た。

このウクライナ問題では、アメリカ、ヨーロッパはアンチプーチンの立場をとっている。

ウクライナには、国を分ける親露、反露勢力がいて、ソ連崩壊後の纏まりにくい言わば失敗国家と言えるだろう。

クリミヤ戦争は、日本の関ヶ原の戦いや壇ノ浦の戦いに相当すると考える。

ソ連が崩壊した時、クリミヤ人の圧倒的多数がロシア入りを支持していた。

 

森元総理が安倍総理のプーチン大統領宛の親書を携えてロシアを訪問したが、なぜ安倍総理が電話会談をしないかが気になるところである。 2月の時とは、雰囲気が大きく違ってきている。

 

今後の安倍内閣の課題としては、

アメリカとは、日本の今後の進むべき立ち位置をオバマ大統領に納得させることが肝要。

歴史認識の問題は、アメリカと日本の関わり(ハルノートや、原爆投下など)を振り返りながらどう解決してゆくか考える。

 

アメリカとの信頼関係が回復すれば、ロシア問題について、真剣な対話ができるようになる。

ロシアも中国との対決を避けながら、中国との政治経済のつながりを深めている。

しかしながら、中国だけとのつながりを深めることを避けるロシアには日本との親交を深めたいとの地政学的要請をプーチン大統領は持っている。

その中にあって、中国と欧米の間にある国は、日本とロシアである。

今後日本が世界の中で発言権や存在感を増す大変大事な機会ではないだろうか。

北方領土を解決するためにではなく、中国と欧米の間にある日本とロシアの役割があると、オバマ大統領を説得することが必要だろう。

 

日米・日露が改善されれば、韓国に対する日本の位置は遥かに良くなる。

韓国の皇民化の問題は、村山談話が対応している。

日本の戦後の外交は大変厳しかったが、ひとつひとつ解決していけるはずである。

 

最後に尖閣を元の状況にもどさねばならない。

中国の経済軍事的台頭にどう対応するか、今は中国問題が一番大きな課題となって来ている。

日本の外交力が強まることが、解決を容易にする。

 

外交の現場の生々しい動きを、大変分かり易く解説頂いたご講演は、時間を余すところなく進み、来場者を日本の置かれている現実に引き合わせてくれた大変興味深いインテリジェンス溢れる講義でした。

尚、東郷先生の著書に歴史認識を通して「新しい日本の国家ビジョン」が記されている。

是非ご一読を!

 (文責: 学習院桜友会・月例会委員会)

「歴史認識を問い直す」

――靖国、慰安婦、領土問題

定価 781円(税別)

 

「戦後日本が失ったもの」

――風景・人間・国家

定価 743円(税別)

発行所 株式会社角川書店

角川ワンテーマ21

 

 

日ロ、首脳レベルの対話継続  

出典 2014年9月21日(日)17時13分配信 共同通信 一部記事転載

安倍首相は、21日、ロシアのプーチン大統領と約10分間、電話会談し、ウクライナ情勢を背景に途絶えている両首脳間の対話を継続する方針で一致した。

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