2022年 海外インターンシップ体験記
supported byニューヨーク桜友会
令和6年 経済学部経営学科卒
櫻田祐太(サクラダ ユウタ)
私が海外渡航について考え初めたのは学部の3年生になった4月頃でした。3年生になり大学での授業や課題に追われ、大学から就活についての連絡が増え始め、自分がどういった位置で社会に貢献出来るか考え始めた頃でした。しかし、就活を進めるうちに目の前にある選択肢がとても限られているように感じられるようになりました。それは、自分の適性がある職種、仕事が少なく思われたという意味だけでなく、「そもそも自分がやりたいことがはっきりしていない」という本質的な葛藤もありました。このまま “なんとなく” 就活すると、いずれ「自分にはもっと可能性があったのではないか」と悶々とした日々を送ることになるような気がしたのです。そこで、休学することで一度周りの大きな流れから自分を切り離して、自分の立ち位置や、今ある選択肢、自分がやりたいことをはっきりさせたい、そう思い立ちました。
休学して何をするか、と考えたときに真っ先に思い浮かんだのはアメリカに行く、ということです。初めは選択肢の一つとして、渡米して留学することは最もローリスク・ハイリターンだと思いました。幸い私は留学に必要な費用を払うことが出来たし、英語も得意でした。また、アメリカ生まれだったので、留学と就労のためのビザが必要ありませんでした。渡米にあたっての環境にはかなり恵まれていたと言えます。こうして、私は渡米することを決めました。
渡米先にNYを選んだ理由としては、友人がいたこと、さらに若いうちにNYに行けば視野を広げこれからの人生に自信と余裕がもてるのではないかと思ったことが挙げられます。
NYに行くと決めたら、次にはそこで達成したい最終的な目的を再考しました。このときには留学よりも「NYのIT企業でインターンをすること」を目標として据えました。自分が英語を用いて海外で働けるかということを知ることは、自分の可能性を見極めるという当初の目的に沿ったものでした。また独学でAIやデータ分析について学習していた私にとって必ず良い経験になると確信していましたし、実際その通りでした。
ただし、アメリカに行ってから一人でずっとインターン探しをしていては現地で友達を作ったりネットワークを広げにくいのではないか、と知人にアドバイスを受けました。“Microcosm of the world” とも呼ばれるNYで、世界各地から来た人々と交流することもまた、重要なことでした。そこで最初の3ヶ月間語学学校に通うことに決めました。ただし語学学校は留学という認識ではなく、インターンシップの準備段階という位置づけです。
ネットで紹介されているNYの語学学校のうち、費用が程よいものを選びました。その時たまたまキャンペーンで3割引きだった語学学校に決めて、自分で直接連絡し手続きをしました。他の学生は日本のエージェントを通じて語学学校に申し込んだ人もいました。空港からの送迎や仮住まいの手配などの利点もあるようです。
語学学校での生活は刺激的で楽しいものでした。クラスには人種性別年齢問わず多種多様なバックグラウンドを持つ人が集まり、毎日与えられるテーマに関して意見交換をしていました。それまでは勝手なイメージを思い描いていた外国の人々と、初めて繋がったような気持ちでした。一度そういった感覚を手に入れると、世界情勢に興味を持ったり、外国で生活することを視野に入れたりすることに抵抗が無くなりました。
英語の習得という観点ですが、語学学校ではクラス分けテストがあるので授業についていけないという事は少ないと思います。私は上級クラスを受講することができましたが、基礎的なクラスでは日本の中学英語のレベルから復習します。ですから、英語力に自信がない人でも心配しなくて良いと思います。私の周りにも英語はほとんど話せないが、語学学校で一年間みっちり勉強するという人もいました。しかし、海外での時間を有効に使うためには日本で学習しておける事は最大限こなしておくことが重要である事は言うまでもありません。
語学学校の授業の後は、日々、クラスメイトと観光名所や美術館を回ったりしました。NYには無料のイベントがたくさんあるので、情報収集能力次第で様々な経験が出来るはずです。NYには毎日無数の機会がありますが、それらをどこまで活かせるかは情報収集能力と行動力によるでしょう。語学学校の3ヶ月はとても短く感じましたが、同時に自分が英語でコミュニケーションが取れるという自信を得られました。
語学学校の卒業が近づいて来た頃から、インターン探しを始めていました。アメリカで働いた経験がある学習院のゼミの教授にも相談して、アメリカでインターンをすることは実現可能だと確信してやってきました。しかし、結果として予想よりかなり時間がかかりました。私の戦略は「数撃ちゃ当たる」で、LinkedInを通じてとにかく多くの会社にアプローチすると言うものでした。人手不足になりがちなスタートアップの会社であれば、事業が日本に関係している場合、雇ってくれるのではないかという想定です。アメリカで働いていた友人に勧められたこの戦略は上手く行くはずでしたが、思いもよらぬ落とし穴がありました。それは、アメリカでは多くの会社が無給のインターンは雇いたがらないという慣行です。インターンが無給で働くということが受け入れ企業にとってアドバンテージだと考えていたのに真逆だったのです。日本では無給のインターンは比較的多いですが、アメリカでは無給インターンは搾取的雇用形態として問題視されることがあり、良い会社であるほど避ける傾向にあります。
私は、語学学校を卒業した後、インターンが出来ずに過ぎていく日々に焦りを感じていました。次第に持てるものを全て使ってこの事態に対処しようという気持ちになり、知っている限りの知り合いに連絡を取ったり、テックイベントに参加したりしていました。その時に初めて桜友会のNY支部にも連絡したのです。この時に勇気を出して良かった、と今振り返って思います。
桜友会NY支部の方にインターンを探しているという旨のメールを送った際、卒業生の皆さんがすぐに反応して私の話を聞いてくださいました。私がどのような状況で、これからどのような業界で働きたいのかなど丁寧に確認して下さり、お知り合いの方々に連絡してくださいました。そして紹介していただいたいくつかの会社の方と面接に漕ぎ着けることができ、その中のひとつの会社でインターンシップを受け入れて頂きました。会社の事業やインターンシップの内容も自分のやりたい分野に合致したものでした。インターンシップが決まったときは、心底安心しました。協力していただいた桜友会NY支部の方々にはとても感謝しています。
私のメインの仕事は、取引のログデータからBI(Business Intelligence)関連資料を作成することでした。日本にいた時から独学でデータ処理や深層学習について学んでいた私にとって、実際のデータに触れて仕事する機会を得られてとても貴重な経験が出来ました。会社の上司の方々は私の将来に役立つスキルが身につくような仕事を工夫して割振ってくださいました。オフィスには様々な人種の方が働いていて、ラウンジで雑談することもありました。アメリカのテック企業で英語で働くことができたことは、私にとって大きな自信になりました。
私は今回の渡米とインターンシップを終えて、ネイティブのように英語が流暢になったということも、データ処理の技術をマスターしたということもありません。しかし、多種多様な人々が騒がしく生きるカオスの中のNYで自分の可能性や、やりたいことがよりはっきりと浮かび上がってきたように感じます。日本の外に出て、海外で生活する事はキャリア的なメリット以上の価値があります。もし留学やインターンシップをすることが出来る環境であるなら、その経験は新たな自分の可能性を発見する機会になるはずです。