第16回 桜友会特別フォーラム 開催報告

第16回特別フォーラムが4年ぶりに開催されました
コロナ禍で2019年以来開催できなかった特別フォーラムが、令和5年(2023年)11月28日に映画字幕翻訳者の戸田奈津子さんをお迎えし行われました。
タイトルは「字幕翻訳の楽しさと難しさ」。初等科生から大学生、そして桜友会のあらゆる世代の幅広い年代が参加。1100人が定員の百周年記念会館を埋め尽くす程の多くの方がいらして下さいました。
オープニングに桜友会100周年の際に制作した映像が流れ、東園基政桜友会長のご挨拶で幕が開けました。司会の木下智佳子さんが戸田さんのプロフィールをお写真とともに紹介。特に親しくされているトム・クルーズさんとの貴重な1枚もあり、ご本人が登場すると大きな拍手が沸き起こりました。
戸田さんは、現在87才。昨年5月に公開された「ミッション:インポシブル/デッドレコニングPART1」も字幕翻訳され、いまだに現役です。
講演は若い世代に向けたメッセージが詰まっていました。
当時の字幕翻訳の仕事は経験豊富なベテランの仕事。新人が入り込める余地はなく、本格的にこの仕事ができるようになるまで20年以上かかったそうです。
途中であきらめることは一度もなかったのは、子供の頃から「映画」が大好きで、「好きなこと」を仕事にしたいとずっと思っていたから。ほかにそれ以上に夢中になれることは見つからなかったといいます。戸田さんは「恋愛」を例に挙げて、「好きな人ができるとその人の名前は何だろう?何が好きなのか?といろいろ知りたくなるでしょ。私は「映画」が好きになり、とことん知りたくなって。セリフを理解したくて英語の勉強をして、映画の原作は何だろうと探したり、監督について調べたり、「映画」をいろんな方面から突き詰めていきました。」
「好きなことをもつこと」そして「それを続ける」ことの大切さを伝えてくださいました。
フランシスコ・フォード・コッポラ監督が映画のプロモーションで来日したときに通訳をしたことが縁で「地獄の黙示録」の字幕翻訳を任されるようになります。ここが字幕翻訳のスタートになりました。その他にトム・クルーズのスタントなしの映画撮影の話、コッポラ監督の日本滞在のエピソード、画面の中のセリフに字幕を入れる難しさ、翻訳を1週間で仕上げなければならといという過酷さなど映画業界の裏話もたくさん伺えました。
また、「日本は「流行語大賞」といったどの国にもない「言葉」の流行がありますが、映画の字幕の言葉には「流行」はありません。どの時代にも通じる、長く残る「言葉」を訳すことが重要。」というお話しには、「言葉」の持つ力を感じました。
最後に学生たちから翻訳の表現方法や印象に残っている映画になどについての質問がでましたが丁寧にお答えくださいました。
日本の映画界を支えている戸田さんの魅力に参加者全員が魅了されていました。