観光事業研究部の歩み

昭和28年、第二次世界大戦の苦しみから、漸く立ち直り、平和な時代の到来が告げられようとしていた。そして学習院大学でも、その平和の象徴ともいえる旅と観光に目を向けた学生たちがいた。

 昭和28年、学習院高等科の卒業を目前にした、鉄道と旅を愛好する学生たちが、大学での「同好会」結成のために準備を始めた。そして同年4月、大学進学と同時に学習院観光事業研究会(GTB)を設立する。設立時は女子部からの進学者や、外部からの入学者と合わせて20名弱の会員であった。
その後、会員が急増し、資金も会費だけでは賄いきれなくなり、運営費を捻出するための企画を立てることになる。当時はダンスパーティーが流行し、多くの部やサークルは、そのパーティーで運営資金を集めていた。観光事業研究会も様々な案を考えたが、当たり前ではつまらないと日帰りバスツアーを企画し、学内だけではなく外部(主に目白周辺の学生)にも呼びかけた。これは、バスを一台借りきって行うもので、初めは危険という理由で許可が下りなかったという。それでも、何度も学校との交渉を重ね、承認を得て、伊豆方面への第一回の観光事業研究会主催の日帰りバスツアーが開催された。このツアーは好評を博し、以来、毎年春秋の2度のバスツアーは恒例となっていった。後に同じく観光事業を研究する、早稲田大学観光学会、慶応大学観光事業研究会、立教大学ホテル研究会などもこのバスツアーを参考に、同様の企画を実施していった。
また、創設後初めての文化祭(院祭)では、観光相談所の設置や当時の最新型観光バスの展示・試乗会などを行った。

昭和29年院祭で、右端が山田明夫初代委員長

 このほかにも、修学旅行の添乗業務の実習を、当時は合併によりできたばかりの近畿日本ツーリストの協力で行ったりした。
昭和31年当時、観光に関する講義がカリキュラムに加えられていたのは立教大学だけで、そのほかは研究会が、先に挙げた早稲田大学、慶応大学と日本女子大学、大妻女子大学にあるだけだった。これらの大学ではどこも運営費の問題で頭を痛めていた。そこでバスツアーや様々な企画の情報交換などを頻繁にするようになり、次第に連盟結成の動きとなっていった。そして昭和31年夏、皇居前のパレスホテルで結成式を行い「全日本学生観光連盟」がこの6校により結成された。これとほぼ時を同じくして、観光事業研究会は部に昇格し、観光事業研究部となった。
会創設後、47年を経た現在(2000年)、現役の部員たちは先輩たちの築き上げた基礎を大切に守りながら、さらに時代の変化に適応しながら活動している。今、活動のメインとなっているのが大学祭での研究発表と、毎年恒例の冬のスキーツアーである。
学祭での研究発表は発足当時から続いている。まさに観光事業研究部の柱である。毎年夏休みに各調査地で調査合宿を行い、大学祭でその成果を発表する。そして、その成果を調査報告書の形でまとめている。内容はデータ・分析ともに非常に充実しており、極めて優れたものになっている。
冬のスキーツアーも昨年は蔵王、一昨年は苗場と、学外の方も交えて大盛況のうちに開催された。ほかに、山手線一周や沼津での合宿など、1年を通して多くのイベントがある。研究と遊びを両立させながら成果を残していく、観光事業研究部はまさに部活動の本道を歩み続けている。

令和元年(2019)10月5日 観研OBOG会主催<両国ツアー>