平成10年11月1日発行第73号より抜粋

激変する地球環境

光徳小屋秋の便り

第13回オール学習院の集い開催日決定

新刊紹介


キャンパス・ニュース・・・・
激変する地球環境
学習院女子大学教授 脇田 宏氏

 私は初等科から大学、大学院と一貫して学習院で育てていただいた。地球化学を専攻し、地球のマントルや月の石の研究、さらには火山の噴火や地震予知の観測などを行ってきた。昨年、東京大学を定年退官し、学習院女子大学に移るのを契機に今日最も重要な問題となっている地球環境を中心テーマとすることにした。
 地球環境は激変している。今年の天気をみても、春先の異常な暑さ、梅雨模様のまま夏はなく、台風の少ない秋を迎えようとしている。日本の天候不順も大変だが、世界各地は未曾有の大洪水や大干魃に見舞われている。異常気象は直ちに農業生産物や漁業の収穫、経済などにもひびき、不安感も大きい。
 いよいよ、言われていた地球温暖化が目に見える形で現れてきたのだろうか。オゾン層の破壊、酸性雨、砂漠化といったゆっくりとした変化では目覚めない人類に、制御のきかない時代がどんなものなのかを見せつけているのであろうか。
 地球には、陸と海、そして大気がつくりだす巧妙なシステムによって、生物の生存に適した条件が保たれている。しかし、人類による過度の社会活動がついに繊細な地球システムを壊しはじめているのではないだろうか。さらに、最近では環境ホルモン物質の影響など未知の大きな問題も生じている。
 これらの現象は、あまりに多様で進行も早く、その原因を探り対策を考える暇もない。女子大学では、発生している事象を正確に理解し、今後の人間の生き方など価値観の見直しなどをふくめて、学生と一緒に考えていきたい。


光徳小屋秋の便り
山桜会(山岳部OB会)

 小屋の前に小さな草原があります。夕方から夜にかけて鹿がやって来ます。2つの群で全部で7頭、昨年までは5頭でしたが、今年は2頭増えました。この草原でお産をしたのです。
 鹿の声でピー、ピーピーと云う一定の鳴き声は「私の餌場だから他所のものは餌を食べるな」と云う警告音なんです。林のどこかで鹿がこちらを必ず見ています。キィーンと云う鋭い声はびっくりした時に仲間に危険を知らせる音です。この時皆すごい勢いで林の中に逃げて行きます。秋になって落ち葉の林に、鹿の悲しそうな声が響きます。これは求愛の合図です。
 小さな草原ですが、鹿にとって憩いの場です。仲間の安全を確認し合う集合の場でもあるのです。今は赤トンボが無数に飛んでいます。草は実を結び、葉も茎も硬く、鹿にとって食べづらいそうです。柔らかい葉をさがしては食べています。
 鹿ばかりではありません。猿もやって来ます。ここに来る猿はいろは坂で餌をねだる猿ではありません。自然の中で生きています。
 こんな事がありました。野ブドウの実が熟成し、食べ頃になって、一頭のボス猿がやってきました。実を食べて見て、未だ甘くありません。静かに林の中に去って行きました。5分位して枯れ木の折れる強烈な音がします。「ブドウの実を食べるな」と言うサインです。
 冬になると此の草原が、初心者のスキーヤーに最適のゲレンデになります。なだらかな斜面、豊富な雪、小屋からいきなり白銀の世界です。お子様も安心して滑れる自分達だけのゲレンデです。今年は10月30日でクロスしますが、「来年は是非、この冬のゲレンデを再開して欲しい」と云う方々が多いので、オープンして頂きたいと思っています。
 11月中旬の雪の降る前に雪囲いの作業に入る予定ですが、管理人の市川さんは今冬より常住します。冬期利用に関しては管理課にお問い合せ下さい。


桜友会事務局だより・・・・
第13回オール学習院の集い
平成11年4月18日(日)開催決定
新中・高等科校舎及び幼稚園園舎公開予定

 毎年開催され益々賑わいを見せている「オール学習院の集い」の日程が上記の通り決定しました。
 幼稚園から卒業生まで一同に会し、歌や音楽、各種催しに対抗戦、各種OB会、各種OG会が有り大変楽しい一日です。
 特に初等科からOBまでの方々が一緒に演奏する音楽会は大変素晴らしいもので、他校では絶対真似の出来ないものです。
 当日、同期会、ゼミOB会等も一緒に行いませんか。
 もしご希望の方は、会場確保の事もあり、早めに事務局までお問い合せ下さい。
 なお、当日は、本年9月に竣工しました高・中等科校舎および来年2月竣工予定の幼稚園園舎が公開される予定ですので是非それぞれの新校舎・新園舎をご見学下さい。


新刊紹介
書名:起死回生の数学的発想

著者:吉沢光男(50数)
 著者が、前書きで「数学以前の問題として重要な"ものの見方と考え方"についてできるだけ数式を使わずに楽しく表現した」と語っているとおり「くじ引きとジャンケン、どちらが公平か」「偏差値の限界」など、数学的な課題を平易に解説しており、エッセイとして読める内容になっている。
 (扶桑社 1,300円 B5版195頁)

書名:日本の子供にどう英語を教えるか

著者:法師人辰娘(61米)・
坂本姫子(大阪・常盤短大講師)共著

 イナイイナイバーの遊びから始まって、お店やさんごっこ、ボール遊びなど、体を使った遊びと歌で子供と一緒に遊びながら「使える英語」を身につけさせる。
 イラストを入れ読みやすい内容になっている。
 (はまの出版 1,500円 B5版254頁)

書名:季の彩り(ときのいろどり)

著者:ぴんしゃん会同人
 学習院写真部OB有志(代表・水谷晴彦・30経)8人のカメラマニアが同人結成15周年を記念した作品集・四季折々の自然との対話をレンズにとらえた「必見の書」
 (光村印刷KK 1,000円 B5変形48頁)

書名:夢を語る役者たち

著者:構溝幸子(31政)
 月刊誌「演劇界」に平成6年から約4年間連載した"ニュース性のある役者さんのインタビュー"にその後の歩みを加えてまとめたもの。大病を克服して15代目を襲名した片岡孝夫を筆頭に歌舞伎役者を中心にとりあげ、文化功労者に選ばれた永山武臣松竹会長(20高卒)の"歌舞伎は日本の宝"の言葉で終わる。33人の素顔を30年余演劇記者一筋に歩んだ著者が浮き彫りにする。
 (演劇出版社 2,200円 税別 B5版 284頁)

書名:フランス悲劇女優の誕生 パリ 宮廷の華

著者:戸張規子(34仏)
 悲劇女優の幕開けを告げたデュ・バルク、ラシーヌ悲劇を初演してその地位を確立したシャンメレ、伝統を後世に伝えたルクヴルール、この3人の女優の生きざまを通してフランス悲劇の流れと時代背景を現地で手に入れた資料を駆使して展開する。
 (人文書院 2,100円 税別 B5版 229頁)

書名:東京12チャンネルの挑戦

著者:金子明雄(34経)
 「私の母は幼稚園を経営していた、根っからの教育者である。大学で2年間留学し遊んでいた私は不肖の息子だった」と言う著者が東映ニューフェイス、TBSを経て「12チャンネル」(現在のテレビ東京)に入り同局の草創期から今日まで現場で活躍した時代を回顧した生気あふれる手記。
 (三一書房 1,900円 税別 B5版 239頁)

書名:はじめての真空技術

著者:橋爪寛行(31物)・
飯島徹穂(工博)との共著

 真空を作るために必要な容器材料などについて、短時間に学べるように配慮した技術書。
 橋爪氏はこの他97年出版の機械用語大辞典(日刊工業新聞社)でも執筆を勤めている。