学習院俳句会

会 員 自 選 句

傘袋犬の形に氷りけり         月を
寒月の品川沖の汽笛かな        久美恵
 聖地巡礼で
冬うらら聖地見おろす丘に立つ     美津
ゆつくりと痺れの溶ける返り花     靖子
靖の字を吾子に賜はり初詣       洋子
来ぬ人の話で弾みおでん酒       節子
風花や蔵王颪の桑畑          新子
長閑なる日はひつそりと嵯峨野路を   祥石
三方に供えの歯朶の反り返る      若水
癒えるなら他に望まじ返り花      加扇る
梅の香は月夜に近かき山の家      千鶴
この校門この道が好き初句会      由紀子
年酒を受けし廊下の軋みかな      良子
子規庵の庭六坪に冬の月        けん
どこかで夫に出会えそうなる秋日和   弘子
歌留多読む聲のか細さ愛(かな)しめり  野分子
あいまいはあいまいとして初御空    淑子
潮上げて来し大川や鳥雲に       公子
知恵湧かぬ日のまんさくのよぢれかな  カヨコ
芭蕉忌や深川めしに貝の砂       きしを
枯れ菊や枯れたるままに風情あり    謙子
冬晴れの空を受け止め大鳥居      浩子
手にのせし綿虫蒼き翳たたむ      祥子
立冬や沈みては浮く磯の塵       薫子
千住まで舟でまゐらむ菊人形      浩
第三子親王さまぞ秋たかし       應孝
稲刈りや疎開組なる同窓会       叔彦
短冊は日本刀なり冴へ返る       泉
ラヴェル聴く一人寒夜の赤ワイン    領子
一徹を信条として龍の玉        輝夫
コートのまま机の上の返事読む     尭子
靖国の兄と語りて初句会        正展


2007年1月 新年句会 赤坂 黒澤にて

●学習院俳句会句集「岩ひばり」第1句集(昭和31年刊)に寄せられた小宮豊隆先生(当時学習院大学教授 文学部長)の序文

この句集の名前をつけてくれと頼まれた。私は日郎君の「天涯に雲たむろせり岩ひばり」の句が気に入ったから「岩ひばり」を句集の名前にしたらどうかと思った。
しかし「岩ひばり」といふ言葉を、私は聴いたことがない。それで私は、手近の角川書店の「俳句歳時記」を探してみたが、それには「岩燕」はあるけれど、「岩雲雀」はない。しかもこの句は「岩ひばり」といふよりも「岩つばめ」といった方が、私には遥に適切である気がするし、殊にこの句が気に入った理由も、私の眼は「岩ひばり」と読んでゐたにも拘らず、私の頭はそれを「岩つばめ」と受け取ってゐたせゐであったやうに思ふ。しかし日郎君のこの句は、「ひばり」と「つばめ」と書き誤ったのではなく、事実日郎君は白馬岳で「ひばり」を見たので「つばめ」を見たのではなかったのかも知れない。もしさうだったとすれば、私はこの句集の名前を、一往は「岩ひばり」といふことにして、実際は「岩つばめ」を意味するのだといふことにしてはどうかと思ふ。
もちろん外の諸君が、そんな無理な名前は困るといふやうだったら、この案は撤回するより仕方がない。
   昭和三十一年十二月十一日      小 宮 豊 隆(原文のまま)

(注)日郎君:岡田日郎(31年大文国) 「山火」主宰 俳人協会副会長

●学習院俳句会最近の活動状況
 句 会  毎月1回開催
 吟行会  随時開催
 句集「岩ひばり」発行(不定期) 平成17年10月 第10句集発行

●学習院俳句会は超結社の楽しい句会です。
 学習院卒業生で参加ご希望の方は、下記の世話人までご連絡ください。

●代表者 津端隆二 (33年大政治)
 総 務 倉田健一 (33年大政治)
 世話人 二ノ宮浩子(33年大文英)
     TEL/FAX 047−343−3812