平成19年12月1日発行第91号 秋・冬号より抜粋

会長所感
在校生との結びつきを強めよう

桜友会長 内藤ョ誼(昭29高)

 平成19年5月24日の桜友会総会で亀井泓先輩の後を継いで会長に選任されてから、はや半年、瞬く間に過ぎたように感じられます。亀井会長ご在任の5年間、桜友会の活動が目覚しく強化されたことは、ここに繰り返すまでもありません。私は前会長の敷かれた路線を継承し、さらに発展させていくことを基本に、会の運営に当たっていきたいと考えております。これまで新米の会長を支えてくださった会員各位に、この場を借りて厚く御礼申し上げますとともに、これからもさらなるご協力をお願いいたします。
 桜友会は「平成19年度基本方針」として、@学習院への支援強化A会員向け活動の充実B組織の強化の三本柱を掲げてきました。もちろん、これらの課題は単年度に達成できるものではありません。可能なところから辛抱強く、実現への努力を重ねていく必要があります。
 @に関して、私がとくに重視しているのは、在校生との結びつきです。いま世の中で「学習院らしさ」が認められているとすれば、それはやはり皇族の方々も学ばれる学校としての品位を残しているからで、これを失ってはならないと考えるからです。そのためには、母校の伝統を身につけた卒業生と在校生の交流の場をできるだけ増やしていく必要があるでしょう。とりわけ平成20年度から桜友会の基本会費を学校側が代理徴収する方向で折衝が進んでおり、これが実現すると、学生は大学3年次で正会員と同様に会費納入済みになります。これまでも就職活動への支援をはじめ、桜友会は在学生向けの様々な対応をしてきましたが、これからは「学生会員」を桜友会の輪の中に一層取り込んでいくことが求められます。
 在校生と桜友会を結びつける絆として、輔仁会各部のOB、OGの役割はとくに重要です。スポーツ各部はもちろん、文化サークルも含めて、優れた業績を顕彰するなど、部活動を盛り立てていくのは、卒業生の務めだと考えます。部活に打ち込み、充実した学園生活を過ごした記憶が母校愛の源であることは、会員多数の皆さんがよくご承知のことでしょう。
 会員向け活動の充実については、本部と全国支部の連携を強化していくことを第一に、各支部の活動の一層の活性化に期待しております。学習院公開講演(6月長野市、11月さいたま市)での地元会員のご奮闘ぶりには本当に頭が下がります。院長はじめ学校幹部との温かい交流は、「学習院らしさ」の表れでもあります。
 7月の新潟県中越沖地震では、日赤救護チームの一員として被災直後の柏崎市、刈羽村に入った新潟桜友会会員の方から事務局にメールで現地の模様を伝えていただき、これがきっかけで被災地の会員にお見舞い状を送りました。災害に際して桜友会ができることは限られていますが、これからも万一の場合は現地との連絡を密にして、被災地の会員にせめて励ましの言葉を届けたいと思います。


文学部史学科の福井憲彦教授が永田良昭氏に代わり、
   平成19年11月11日付で学習院大学の第11代学長に就任した。

福井憲彦学長

福井憲彦(ふくい・のりひこ)
昭和21年11月26日生まれ。昭和40年東京都立戸山高等学校卒業。昭和45年東京大学文学部西洋史学科卒業。昭和49〜51年フランス政府給費留学生としてパリ第一大学に留学。昭和52年東京大学大学院人文科学研究科(西洋史学)博士課程中退。東京大学文学部助手、東京経済大学経済学部助教授を経て、昭和63年より学習院大学文学部史学科教授。 研究テーマ・分野はフランスを中心とした西洋近現代史。
【近年の主要講義・演習】
西洋史特殊講義.フランス近代家族史、「時間の文化史」再考、ヨーロッパ都市史考察、西洋史演習:西洋近代史の諸問題。基礎演習 歴史の学び方。
【近刊著書・編著】
「歴史学の最前線」(共著)東京大学出版会 2004/「近代ヨーロッパ史」放送大学教育振興会 2005/「ヨーロッパ近代の社会史・・工業化と国民形成」岩波書店 2005/「フランス1 ロワール流域から北へ」(共著)山川出版社2005/「歴史学入門」岩波書店2006/「アソシアシオンで読み解くフランス史」(編著)山川出版社 2006


安倍能成氏が師事した
夏目漱石と学習院
生誕140年の平成19年に様々な記念企画が!


 平成19年(2007)は学習院が開校した明治10年(1877)から数えて130年。
 戦後の新学習院誕生の昭和22年(1947)からは60年。
そして、新学習院の院長、初代大学長だった安倍能成氏が師事した夏目漱石が生まれた慶応3年(1867)からは140年である。

江戸東京博物館・東北大学編の公式ガイドブック。特別展は平成19年9月26日〜11月18日に開催された。また、生誕地である新宿区の「新宿歴史博物館」でも、11月3日〜12月16日に特別展「夏目漱石と新宿の文学者たち」が開催されていた。平成20年度より漱石の孫に当たる夏目房之介氏が学習院大学大学院人文科学研究科で教鞭をとる予定

 夏目漱石は慶応3年(1867)江戸牛込馬場下生まれ。翌年が明治維新なので明治の年号と同じ年齢で年を重ね、大正5年(1916)に49歳で亡くなった。ちなみに誕生地(現・新宿区喜久井町)には生誕100年を記念して建てられた石碑があるが、碑文は第18代学習院長で初代学習院大学長だった安倍能成氏の筆によるもの。氏は東京帝国大学時代に漱石の教えを受けて以来、小宮豊隆、阿部次郎、森田草平各氏とともに四天王といわれた、門下生の中心人物だった。
 平成19年(2007)は漱石生誕140年ということもあり、様々な記念企画が催されたが、江戸東京博物館開館15周年記念の特別展「文豪・夏目漱石−そのこころとまなざし」が興味深かった。この特別展は朝日新聞入社100年、東北大学創立100周年記念でもある。晩年を過ごしたいわゆる漱石山房にあった蔵書類の展示が特徴的だったが、これは第2次世界大戦時に空襲を避けるため東北大学の図書館に移されたもの。東北大学との縁はこのことによる。この移設に尽力した小宮豊隆氏はのちに学習院大学で教授をつとめている。
 漱石は学習院に足を運んだこともある。大正3年(1914) に学習院で講演をしている。講演録が講談社学術文庫の「私の個人主義」に収録されているので一読をおすすめしたい。