平成13年5月1日発行第78号より抜粋

女子教育の伝統を支えた半世紀

自由な留学生活に感激

第15回 オール学習院の集い開催

新刊紹介


女子教育の伝統を支えた半世紀

特集 ・ 短大  次世代への礎を作る
第1回73名
最後の年774名
総卒業生数22,539名

 学習院女子短期大学は、実質的には99年(平成11年)3月に97年(平成9年)度入学の学生(48回生)の卒業をもって幕を閉じ、最終の一年間は重なりましたが、その後四年制女子大へと移行いたしました。戸山キャンパスに、50年(昭和25年)4月に開学して以来、半世紀の歴史を経た短大も、今年5月頃には文部科学省の認可がおりて、正式に廃止となる予定です。名実共に学短が消えることになります。

 そもそも短大の設立は、49年(昭和24年)の学校教育法が改正されたのを機会に、当時の女子高等科の父母による強い要望で実現したものでした。
 校舎は初め、短大専用の旧3号館が竣工されるまでは、女子中・高等科と共用で利用していました。それから15年経った高度成長経済の中で、短大のニーズが高まってきたのを受け、定員を増やし、学科、専攻の改革が行われ、それにともない校舎も次々と新築されました。就職状況も良く学短の評価は高まりました。
 その後更に教育、建物施設が充実されましたが、社会全体の現象で四年制大学への編入希望者が増え始め、ついに96年(平成8年)学習院女子大学開学準備室が設置され、改組転換することとなりました。そして短大廃止の正式な手続は、今年に入ってから行なわれました。
 最後の短大生と女子大一年生がいっしょに学び学生生活を共有したことで、色々な面が女子大へ受け継がれたに違いありません。
 桜並木やレンガ校舎前のヒマラヤ杉、中庭のメタセコイアも共に見つめてくれているように思えます。
 参考資料
「半世紀 学習院女子短期大学史図録」(学習院女子大学・女子短期大学発行)を参考にいたしました。資料編も続いて発行される予定です。短大をまとめた資料としては、昭和56年学習院女子短期大学発行の「三十年」もございます。詳しくはお問合せください。 TEL 03-3203-1906

短大 50年の歴史
昭和24年(1949)
25年(1950)



26年(1951)
 
27年(1952)
 
28年(1953)


29年(1954)
31年(1956) 
 
32年(1957)

33年(1958)
34年(1959)
36年(1961)

 
37年(1962)
39年(1964)
41年(1966)
43年(1968)



44年(1969)



45年(1970)

46年(1971)
47年(1972)
48年(1973)


50年(1975)
52年(1977)
53年(1978)
54年(1979)
55年(1980)
57年(1982)
60年(1985)
61年(1986)
64年(1989)
「学習院大学短期大学部設置認可申請書」を文部大臣に提出認可
小宮豊隆部長就任
開学式(文学科−国文学専攻・英語専攻)
戸山キャンパス正門、目白構内より移設
皇后陛下 行啓、授業参観
家庭生活科を開設
2年生に文学科から順宮厚子内親王はじめ14人が転科
第1回卒業式、卒業生73名、天皇皇后両陛下行幸啓
標準服制定
文学科を文科と改称
学習院女子短期大学と改称
家庭生活科の栄養士養成課程設置認可
旧3号館竣工
4号館(赤レンガ校舎)2階中央に大教室完成
門衛詰所設置
戸山講堂で短大独自の卒業式を挙行
安倍能成院長、短大学長を兼任
学生食堂開設
卒業生団体「草上会」発会式
新校舎(現2号館)竣工
栄養士養成課程を廃止
4号館(赤レンガ校舎)内に輔仁会部室設置
標準服廃止
第1回プレーデー
日高第四郎学長就任
増築校舎(現2号館)竣工
英語専攻を改組、I、II類を設置
4号館の大教室を改造、短大専用の図書閲覧室を開設
学習院女子短期大学学科転換認可申請書を文部省に提出
人文学科転換認可(文部省、短期大学に「学科」の設置を初めて認可)
人文学科と文化史専攻設置
5月4日を関学記念日に制定
10月やわらぎのつどい
児玉幸多学長就任
第1回和祭
学習院図書館戸山分館、短大図書館と女子部図書館に分離
1号館竣工
5号館竣工
磯部忠正学長就任
和寮開設
6号館竣工
図書館司書、学校図書館司書教諭課程を新設
第1、第2和寮閉鎖
近藤不二学長就任
学習院女子短期大学創立30周年記念式典
短大図書館(戸山図書館)竣工
小倉芳彦学長就任
互敬会館(3号館)、部室棟竣工
開学記念日を6月1日に変更
平成3年(1991)
4年(1992)
6年(1994)
9年(1997)
10年(1998)



11年(1999)
近藤不二学長就任
付属教育、研究施設として英語センター設置
7号館(山路ふみ子記念学習院国際文化センター)竣工
学習院女子短期大学最後の入学式
学習院女子大学開学
近藤不二女子大、短大学長就任
近藤不二学長退任
早川東三女子大、短大学長就任
卒業式


自由な留学生活に感激
桜友会スカラーシップ第3回生 榮谷明子


1996年3月学習院女子高等料卒業 1996年4月東京大学教養学部入学 現在東京大学教養学部文化人類学科在籍 1992年8月からl年間オランダ国アイントホーヘン市に留学 桜友会スカラーシップ制度第3回留学生として、1999年8月ミシガン大学留学 研究テーマは「日本の身体障害者について医療人類学からのアプローチ」

右側が筆者

ミシガン大学留学への道のり
 98年に長野で開かれたパラリンピック大会がきっかけです。腕のない人、足のない人たちが生き生きとしてスポーツの限界に挑戦する姿をご記憶の方も多いと思います。ボランティアとして選手村に2週間滞在した私は、レースだけでなく、食事や観光などプライベートな時間を選手たちと過ごすことができました。彼らはスポーツマシ同士、国際的な交流が盛んで、特に中途障害の(先天性ではない)人たちの中で、受傷したときのショックを乗り越え、障害とうまくつきあうことができている人は、他人とのコミュニケーションも非常に上手だったように思います。ちょうど卒業論文のテーマを探していた私は、彼らと過ごすうちに 「障害者」という言葉が含んでいる重いイメージを変えるような卒論を書きたいと思うようになったのです。
 問題はどの切り口から扱うかですが、ただ、日本では障害をテーマにした学問書がまだ少なく、私の目は自然と海外へ向きました。そして、障害に関する本を多く出版しているミシガン大学に留学を決めたのです。人類学部のピーターズ・ゴールデン教授が医療人類学会の中で活躍していたことも大きな魅力でした。教授は非常に人気のある先生ですが、ご多忙にもかかわらずいろいろと相談に乗って下さり、彼女がいたからこそミシガン大学という場所を十分に活用することができたといっても過言ではありません。

私の心の支え「ハウスメイト」
 ミシガンに留学し家から図書館までのバリアフリーな道を何度となく歩きながら、私は本当に自由な自分を感じました。異国に住む刺激が発想を豊かにすることは勿論あります。しかしそれ以上に、留学生だけがもつ自由があるのです。
 アメリカの大きな大学町はどこでも物価も家賃も高いので、私は大学の寮よりも手頃な家で共同生活をすることにしました。一軒の家を13人で借りて家事を分担するのです。シェフになるため勉強している美樹さんが料理、日曜大工が好きなトービョンが家の掃除・修繕というように、皆が持ち味を生かして助け合います。名前からお気づきの通り、13人のうちアメリカ人は6人だけで、あとは日本人、韓国人、イラン人、ノルウェー人でした。ちなみに私の役割はハウスプレジデント、つまり家長で、正直言って一番楽な仕事でした。誰それの音楽の音がうるさいとか、お風呂が長すぎるとか、すぐ解決することばかりでしたし、普段はお互いの勉強時間や生活習慣を尊重する一方で、パーティを開いてみんな輪になってイランのダンスを踊ったりする仲の良いメンバーだったからです。
 ただ可哀そうだったのがイラン人のペイマンでした。部屋の割り当ては公平を期するため入居順なのですが、彼はノルウェー人で暑がりのトービョンと同室になったため、雪の降る日も窓を開け放した寒い部屋で暮らす事になったのです。冬も深まるとさすがに皆同情し、部屋を代わろうかという話も出ましたが、二人の絆が深まったのか、ペイマンの体が寒さに適応したのか「彼は大切なルームメイトだから代わりたくない」と言って断りました。渡米したばかりの頃、学校の中では留学生としてアメリカ人の学生から見えない壁に隔てられがちだった私にとって、ハウスメイトの存在はいつも家族のように温かい心の支えでした。
キーワードは「障害は個性」
 私の研究テーマの障害学は、主にアメリカで研究が進んできた分野ですが、理論的で実際の障害者像が見えにくいと指摘されていましたが、今では人類学分野からの研究が進んでいます。何か障害学などというと難しそうですが、障害学のテーマを具体的に挙げると例えば次のようなことです。まず高齢化の問題です。誰でも年齢と共に体が変化していきます。大きな病気や怪我をしても命が助かる時代に、人生のある時点から重度の障害者として生き続けるとしたら、人はどんな生活を望むでしょうか。それから優生思想に基づいて胎児を選別し中絶することの倫理的な問題です。障害を持った子供を産まないことが本当に人を幸せにするのでしょうか。問題の核心は子供の持つ障害にあるのではなく、実は障害をもって生まれる子供をうまく受け入れられない社会にあるのではないでしょうか。
 1月に提出した英文40枚の卒業論文の中で、私は特に「障害は個性」というキーワードを意識しました。実際に障害者はコンピューター・プログラマー、ファッション・モデル、スポーツ選手など、さまざまな職業に就き社会の中で活躍しているのです。障害を逸脱ではなく、差異として社会の中に取り込めば、もっと人の想像力が膨らみ、誰もが住みやすい町、便利なサービス、新しいビジネス、ひいては活気のある社会の構築に役に立つのではないかと思います。
 私は今になって、もし日本にいたら日々のことや、季節ごとのイベントや人づきあいで、気持ちが散漫になっていただろうと思います。自分のテーマをおいかけて卒業論文に集中して過ごせた日々はとても賢沢だったと気づきました。私の留学を支えて下さいました桜友会スカラーシップ関係者のみなさま、本当にどうもありがとうございました。


第15回 オール学習院の集い開催

遠ざかる 研究室や 花こぶし  淑子(俳句の会より)

 21世紀「平成13年度 第15回 オール学習院の集い」が去る4月15日(日)に開催されました。昨年とは打って変わって今年はまさに春本番! 朝からうららかな陽気にめぐまれて10時の開場と共に正門は人出も上々。4時の閉会までに入場者は昨年を上回り8000余人。特に今年は子供の手を引く家族連れが目立ちました。
 朝9時半、恒例の記念植樹式に引き続き10時より学習院創立百周年記念会館正堂で開会式が行われました。島津学習院長、草刈桜友会副会長の挨拶の後、賀陽桜友会会長より(財)アイメイト(盲導犬)協会へチャリティラッフルの益金が贈呈されました。
 式典の後、正堂では「学習院の歌の集い」、幼稚園からOB・OGに至る大藩奏会「オール学習院大合同演奏会」およぴ「懐しのカントリーミュージック」が演奏され、万雷の拍手が終日響きわたっていました。そして2時半からの「桜友会チャリティラッフル」抽選会が行われ、特賞の国内航空券、宿泊券を引き当てた人には大拍手、惜しくも当たらなかった人は大きなため息をもらしていました。
 このほか、お香の会、写真展、遠州流新宗匠のお茶席、常磐会の「四科展」が行われ終日にぎわいました。
 馬場では「お子様乗馬」に422名が参加し、春の陽ぎしの下、馬の背にまたがり大喜びでした。また西5号館東側入口前の「盲導犬体験」では20名の人々が実際に目隠して盲導犬に誘導され、目の不自由な方々への思いやりを新たに感じておりました。また輔仁会各部の集いが開催され多くの卒業生が参加していました。



新刊紹介
著書・心にひびく共感のアプローチ
著者・露木悦子(29短英)
   発行所 (株)医学出版社
   定価1300+税

 高齢化社会と叫ばれて十年余、看護士制度が引かれ、より良く生きるにもお互いを理解する事の大切さを体験を基に切々と訴える。「聴く」姿勢、即ち「受容」と「共感」が自分をも変化させ、自信から生れる自立心と共に他人を思いやる社会が築けるのではと説く。

著書・ダウン・トウ・アース
著者・吉川清庸(56法)
   発行所 文芸社
   定価1200円+税

 物事を選択する時の要素でその人の持つ性格が大きく作用すると説く。オーストラリアへの移住を決断した時の経験を基に社会へ出てから学生時代以上に勉強したと云う御本人の努力を忘れては語れない。

著書・辺境の旅、悠久のロマン
著者・小谷 明(31政)
   発行所 実業之友社
   定価1900円+税

 自然との交わりが人間にとって如何に大切か、ロマンを求めてこそ生きる原点と語りかける。

著書・知って合点江戸ことば
著者・大野敏明(50法)
    発行所 文春新書
    定価690円+税

 江戸即ち東京と言葉の持つ響きに魅せられ、その背景に有る文化を探り、ノスタルジックに、言語学的に描いている。

著書・価値最大化のマーケティング
著者・酒井光雄(52法)
   発行所 ダイヤモンド社
   定価1800円+税

 夢と希望のない人生、大志を抱けない若者達に先輩としての責任をどう果したら良いのか、IT革命と云われる今日、国際比較抜きに考えられない社会情勢を強調。

著書・地獄は克服できる
著者・ヘルマンヘッセ
訳者 岡田朝雄(34独)
   発行所 草思社
   定価1600円+税

 心身をすり減らし喧騒の中に生きる現代人に忘れられた牧歌的生活へのあこがれこそ澄んだ瞳を取り戻せる機会と語る。

著書・チベット東南部ヒマラヤ偵察行
編者 錦織英夫(42経)
    発行者 学習院山桜会

 開拓者の御苦労が伺えると共に高齢化に悩む社会現象の縮図を見る思いである。

著書・運命の人は存在する
著者・植西 聡(44経)
    発行所 サンマーク出版
    定価1600円+税

 障害にぶつかった時こそ積極的に、楽観的且つ肯定的にと一期一会の大切さを心理学的に分析。

落合篤子(平12政)

 この度、自主製作ではありますが、社会から孤立した青年の内面世界と自立へのめざめを描く映画「BLUE TOWER(青の塔)」(監督・坂口香津美)を製作。現在、世界12の映画祭より正式に招待された。今夏六本木の俳優座劇場にて公開予定。家族の揺らぎが叫ばれる現代、家族を根源に据えた物語です。 お問い合わせは、 「青の塔」製作委員会 TEL 03-3551-4769 落合まで。