平成12年5月1日発行第76号より抜粋

桜友会80年のあゆみ

タイ留学の一年

第14回 オール学習院の集い開催

新刊紹介


タイ留学の一年
桜友会フェローシップ第2回生 木下友紀


97年4月学習院女子短期大学国文学専攻入学、桜友会フェローシップ制度第2回留学生として、昨年5月タイ国立チュラロンコーン大学経済学部に入学タイ語を修得、日・タイ両国の伝統文化を伝え合うことを目標としている。

クラスメートと前列中央筆者

憧れのタイに、でもホームシックに
 高校の卒業旅行でバンコクに行ってから、タイのとりこになった。短大卒業後はタイに留学したいという思いから、失礼を承知でバンコク桜友会の相馬豊胤先生にご連絡した所、なんと先生は幸運にも憧れの「タイの東大」チェラロンコーン大学の博士でおられた。ますますタイへの留学に運命的なものを感じ、何度となくタイと日本を往復し、ついに入学許可を頂き、思わぬ幸運に信じられないような気持ちでのスタートだった。しかし何故か去年の五月に来タイしてから数ヶ月はホームシックで日本の夢ばかり見て、両親との電話で泣いてしまったことも少なからずあった。けれども、「いきなり一人暮らしは不安でしょうから」と快く私を居候させて下さった、タイ王室の日本語通訳のプサディさんにはげまされ、なんとかこちらの生活に慣れ、いつもの元気を取り戻すことができた。

中国系タイ人に見られて
 大学は六月から始まり、経済学部には外国人はいることはいるようだったが私のクラスは全員タイ人であった。もちろん授業も全てタイ語。語学学校の先生に毎日タイ語を習ってはいたが、まだ日常会話もままならないのに経済用語となるとさっぱりである。とにかく神妙な顔で座っていることしかできない。(情けないことに未だに大学の授業は大変難しい)けれども大学というところはまた、学生たちと話をする絶好の場でもある。学生たちはほとんどが飛び級しており、四年生でも一九か二〇の子が多い。私はは当時二〇だったのでアドバイザーの先生が四年生のクラスに入れて下さった。歳も近いのですぐに友達ができ、六月末の果物の産地への研修旅行で完全に皆と仲良くなれた。中でも「私はユキのマネージャーだから」と何かと世話を焼いてくれるプンとは一番の親友になった。
 毎週金曜日、大学には市場が出る。食べ物を始め洋服や時計などの小物、植木までが所狭しと並び、人で一杯である。そこでココナッツアイスやタイのかき氷を買って夕暮れまで友達とおしゃべりをしたりする。又タイの大学には概ね制服があるので、それを着ていると私も中国系タイ人に見えるらしく、お店の店員さんから容赦ない早口のタイ語が飛んでくる。どこまでタイ人のように話を続けられるか、ゲームのような最近の楽しみのひとつだ。
 タイ語というのは発音が命の言語なので、いくら学校で勉強しても実際に話してみなければ憶えられない。始めはタイ語英語半々だった友達も、だんだんとタイ語のみで話してくれるようになり、時には私が日本語を教えたり日本からの留学帰りの学生と日本語で話したりして、さらなる語学の上達につながっている。
王妃主催の晩餐会に招かれて
 七月から続いた雨季もあっという間に過ぎ、寒季(といっても暑い)が訪れた頃、日本を代表するデザイナーの方々一行がタイの王妃主催のシルクフェスティバルにシルクを買いに来るので、そのお手伝いをしないかと誘われた。私達は王妃のお客様ということでホテルも食事も特別待遇。移動の際には先導車付き。さらには離宮での晩餐会に出席させて頂くという好機にも恵まれた。シルクのドレスとショールに身をつつみ、ガチガチになりながらもタイのVIPと肩を並べて独特なお辞儀で王妃に御挨拶をした。王室が絶大なる権力を持つこの国では大変な名誉である。この旅は生涯忘れられぬものとなるだろう。
すっかりタイに馴染んで・・・
 バンコクに住んで九ヵ月。プサディさんの家から独立し一人暮らしを始めて七ヵ月。早いもので今年度の授業も全て終了した。仲良くしていた友人たちも卒業してしまうけれど、また新たな気持ちで新年度を迎えたい。
 屋台で大好きなソムタム(パパイヤのサラダ)を食べている時、毎日六時に流れる国歌を一緒に口ずさんでいる時、近距離を歩かずついバイタクシーに乗ってしまう時、日本から来た友達に走らないと着いて行けない時、「ああ私はもうすっかりタイに馴染んでいるんだなあ・・・」と感じる。又、この度学習院とチュラ大の提携が正式に結ばれ、それに先駆けて学ばせて頂いていることを、心から誇りに思う。そして第二回フェローシップ奨学生に選んで下さった桜友会の皆々様、私を大学に推薦して下さり、その後も何かと面倒を見て下さっている相馬先生、私のタイの「お母さん」であるプサディさん、食中毒で苦しんでいる私の所へおかゆを持って訪ねて釆てくれた親友のプン、そしていつでも私を応援してくれる両親、私にこの素晴らしい留学生活を与えて下さっている全ての方々に感謝しつつ、これからの生活をさらに充実させていきたいと思っている。


第14回 オール学習院の集い開催

糸ざくらはかなき色の寒さかな  千鶴(俳句の会より)

 平成12年度の「オール学習院の集い」は、4月16日(日)、前日の雨も上り4月にしてはやや肌寒い1日でしたが、残りの桜の下、約7,100余名の人々が目白の構内に集い大いに楽しみました。
 朝9時半の記念植樹で始まり、学習院創立百周年記念会館正堂において開会式が行われ、島津院長、北白川実行委員長の挨拶に続いてチャリティーラッフルの寄付金が賀陽桜友会会長より「日本点字図書館」に贈呈されました。引続き「学習院の歌の集い」、幼稚園からOB管弦楽団までの「オール学習院大合同演奏会」、カントリーミュージックの演奏、そして桜友会創立80周年記念チャリティーコンサートが開催され、チェリストの溝口 肇氏の演奏に酔いしれました。館内では常磐会による盆石、華道等の「四科展」、写真、書道、ポストカード展、お茶会、お香の会が行われ、似顔絵書きに人気がありました。恒例のお子様乗馬、応援団のリーダー公開、剣道都の野試合を始め各種親善試合、草上会による「花見茶屋」、お子様に人気のどぜうつかみ、ヨーヨー釣り、そして櫻友クラブ主催の「利き酒会」は人気の的でした。80歳以上の方の桜寿会は益々お元気で、学徒出陣の碑の前では当時の関係者が集い、乃木館では囲碁に興じ、各教室では経済学部会、ゼミや各部OB・OG会等が開催されました。



新刊紹介
著書・ザ・キンキー・ファイル
監修・小松崎健郎(H1史)
   定価 3000円+税
発行所 潟Vンコーミュージック

 大英帝国の誇り、永遠のロックバンド、キンキーの名前は知っていても音楽は聴いた事がない方達へのガイドブック。

著書・「経済、経営を楽しむ35のストーリー」
編者・学習院大学経済学部
   定価 1600円+税
発行所 東洋経済新報社

 日本人の生活を大きく変えたコンビニを取り上げ豊かさの中から生れる環境への負荷を見つめ、人生五十年と云われた言葉も死語となった今日の年金制度を考える等、正しく因果関係を推論し、自分自身の生きる環境を整備する為の経済、経営に親しむ書と云える。

著書・「淡淡友情」
著者・平野久美子 (47仏)
   定価 1500円+税
発行所 小学館

 副題「忘れられた日本人」の物語と有る様に日本人が失いつつ有る日本魂を呼び起し、私達への警告書とも云える。

著書・武士の誕生
著者・関 幸彦(50史)
    定価1120円+税
発行所 NHKブックス868

 古代から中世にかけての転換期に坂東の史的風土を踏まえた武家政権の誕生は「日本国」を生み出す原動力となり現代社会の原点を採す一助となり得る書。

著書・正午の茶時へようこそ
著者・小堀宗以(54法)
   定価 1800円+税
発行所 潟Aシェット婦人画報社

 夏は涼しく冬は暖かと当り前の事を身につけてこそ自分自身の鋭敏な感性を呼び覚ます良い機会と説く著者の心が伺える。

著書・やるね!の営業ウーマン
著者・宮崎百合子(56経)
   定価 1000円+税
発行所(株)税務経理協会

 自己満足ではなく、周りの事を考える感性が必要な営業マン。自分自身を売れと説く。

著書・「本朝文粋の研究」 「校本篇・漢字索引篇」
編者・土井洋一(日文科教授)、中尾真樹(63国)
    定価 66,600円
出版社 勉誠出版

 弘仁、長元(810〜1037年間の漢詩文432篇の研究