平成11年11月1日発行第75号より抜粋

学生寮の四季

学長就任1年

清明寮開寮50周年を祝う会

幼稚園新園舎落成記念品募金について

新刊紹介


学生寮の四季
桜友会スカラーシップ第1回生 平井敏雄


94年3月ドイツ文学科卒、97年ドイツ文学専攻博士前期課程修了・同年後期課程、桜友会スカラーシップ制度第1回生として昨年9月からバンベルク大学に留学
研究テーマは「古高ドイツ語統語論」(特に分詞の統語的機能に関して)これまでに既に上級ゼミでドイツ語歴史的語彙論について、また博士論文・教授資格試験論文等執筆中の学生ゼミで研究中の論文の研究発表を行う。

 ドイツの大学は1年が2学期に分かれています。バイエルン州にあるバンベルク大学では、冬学期が始まるのは11月からですが、大学が主催する学期前の3週間のドイツ語研修コースに参加するため、私は昨年9月の末にバンベルクに参りました。日本を出発する際には、まだ真夏のような陽気でしたが、ドイツに着いてみますと、すでに木々の葉は色付き、北の国へ来たことを実感させられました。
 銀行口座の開設、健康保険の契約、外国人登録などの諸手続を、留学生課の案内に従って済ませ、予約してあった学生寮へ向かいますと、建物の入口の所に何やら人だかりが、寮の管理人さんが行方不明で、新しく入居する学生が何人も、大きな荷物を抱えたまま、入口にぼんやりと佇んでいるのでした。私もさっそく仲間入りです。

 ドイツ人の他、アメリカ人、スペイン人など、いろいろな国の学生がいます。中には、もう2時間以上待っているという学生もいました。結局、管理人のK氏はそれからさらに2時間ほどして、夕方になってからやっと現れ、皆やっとこさ自分の部屋に入ることができました。このK氏大変気さくで親切な人なのですが、ほとんど事務所は留守で、こんなことは特別な事ではないことが後で分かりました。
 部屋はお世辞にもきれいとは言えない殺風景なものでしたが、とにもかくにも、1年間住む自分の「城」です。必要なものを買い揃えなどしているうちに、愛着こそわかないものの、まあ、慣れてはきます。部屋は個室ですが、キッチンとバスルームが隣と共用の、半二人部屋といった形態で、ルームメイトのイタリア人フランチェスコとは、すぐに大変仲良くなれました。
 11月に入ると大学の授業開始です。ドイツ語ゼミナール・中世写本学ゼミナール等を受講し、12月にはゲッティンゲンへの研修旅行に参加"ドイツ語辞典"の改訂作業現場を見学するという貴重な体験をしました。
 大忙しのうちに、気が付くともうクリスマスで、、灰色の薄暗い町には、クリスマスツリーやさまざまなオーナメントの灯りが美しくともり、ゲリューワインと呼ばれる、甘い熱いワインのグラスを手にした人々の白い吐息と話し声が、広場を満たすようになります。
 同居人のイタリア人フランチェスコは寒さが大の苦手で、冬の間はいつでも暖房を全開にしています。その結果、我々の部屋は真冬でも気温は25度を越え、遊びに来る友達は皆、「まるで夏のローマだね」。冬中、部屋の中では半袖のTシャツ一枚で過ごしていました。ひと部屋隣の、アイルランドからの留学生はメイヴは、自分の部屋の暖房は一切入れないと言っています。「だって、フランチェスコの部屋から熱気が流れてきて、暖房を止めて、窓開けてても、暑くてたまらないんだもん」。ヨーロッパの北と南との、期せずして興味深い邂逅でありました。
 多くの詩人たちが讃えている、世にも美しいドイツの春が過ぎると、梅雨のないこの国には、意外に早く夏が訪れます。指導教授より5月から夏学期にさらに上級の博士論文コースゼミナールに参加し研究発表するよう誘いをうけました。
 3ヶ月の夏学期はあっという間に終わり、7月も末になると、気温は連日30度を越えるようになります。日本のように湿気が高くなく、からっと晴れているのでずっと過ごしやすいとはいえ、日差しの強さはかなりなものです。町には濃い青空と花々の織りなす原色の色彩がきらめき、どっと押し寄せる観光客たちも、肌も露わな服装で短い夏の日差しを楽しみます。土曜の午後ともなると、レグニッツ川や運河沿いの遊泳場には、バンベルクの老若男女が大挙して繰り出し、大人は日光浴、子供はボートや水泳に興じています。隣のフランチェスコなどは、目を丸くして、「ドイツ人は動物だ」と言います。「イタリアでは、運河=ネズミ」なのだそうで、「運河で泳ぐなんて、不潔きわまりない。信じられないし、人間のすることじゃない」。ヨーロッパにも、さまざまな文化があるようです。
 最後になりましたが、このような留学体験を得ることができ、桜友会スカラーシップの名誉ある第1回奨学生に選んで頂いたことに、大きな感謝の念と誇りを抱いております。帰国後、桜友会の皆様に改めて留学生活を報告申し上げ、御礼を述べたく、心より念じております。


キャンパス・ニュース・・・・
学長就任1年
女子大学長 早川東三

 '近藤不二前学長が亡くなられた後を受けて、女子大学長に就任したのは昨年の今頃。はや1年になる。近藤さんは業半ばにして世を去っていかれたわけで、さぞご無念だったろうとお察しする。大学に限らず、立ち上がりの時期の組織というものは、日日がすべて初体験であって、一日たりとも戸惑わぬ日はないと言っていい。その中で、女子大創設に携わった方々、いま女子大を支えておいでの教員、職員の皆さんの夢と理想をどう実現するのか、独自性はどのように出していくのか、おのが力に余る問題と取り組んで、それ以外のことに眼をくれる暇も興味もない。先般、武道館で開催された私大入試説明会で、女子大のブースに座ってみた。大学としては新参中の新参、受験生たちが興味を持ってくれるか、いささかの不安はあったが、時間帯によっては立って相談の順番を待つ者がいる程の盛況に正直ほっとした。戸山キャンパスで開いた相談会にも、暑さのなか意外なくらい多数の参加者が集まった。短大時代の輝かしい歴史の余光か。それを大切に、さらに努力を重ねたい。


清明寮開寮50周年を祝う会

 去る4月4日、麻布国際文化会館において、久し振りに清明寮関係者(清明会、サモア会、清星会)の集いがありました。
 清明寮は、昭和24年4月、天皇陛下が皇太子時代、高等科に進学された折、中等科の光雲寮のあとを受けて、小金井の地に開設され(のちに目白に移転)、以来陛下には学習院大学御終了の時まで、通算7年の永きにわたり在寮なされたのでした。また2年下級生の常陸宮殿下も同様に高等科、大学を通じ御在寮になりました。(昭和33年3月、常陸宮殿下の御卒業をもって閉寮)
 この間両陛下と寝食を共にした寮生は123名、歴代9名の舎監の先生、安倍院長、小泉信三ご教育係など多くの指導者の薫陶の下、夫々に多感な学生時代を過ごしました。
 今年は陛下御即位10年、御成婚40年のお目出度い年にも重なり、全期間にわたる関係者70余名が参集、陛下には、各出席者と同様、名札を胸に一寮生に戻られて、2時間余に及んだ懇親パーティに最後まで御臨席賜わりました。戦後なにかにつけ不自由な時期、特に小金井は質素な木造の寮でしたが、同じ釜の飯、同じ風呂の湯を共にし、前途の希望に燃えていた紅顔の美少年(?)時代の写真集に見入りながら、いつまでも名残りは尽きませんでした。

野村雄三記(昭31政)


幼稚園新園舎落成記念品募金について

 本年2月4日竣工しました幼稚園新園舎落成を記念して、昨年11月より、幼稚園卒業生・父母のご協力により、募金活動が行なわれておりました。その結果、かねてより高川園長が「幼ない時より、本物の音を聞かせてあげたい」との希望により、グランドピアノ(ドイツ/ハンブルグ/スタインウェイ社製A-188型)・アンティークオルゴール(1890年代ドイツ/ボリフォン社製104型)各一点を寄贈することができました。そして5月22日「落成記念の集い」にて、初等科生らにより、おひろめ演奏会が行われました。


新刊紹介
書名:34のハーブメルヘン
訳者:岩淵達治(名誉教授)、虎頭恵美子(39独)

 オーストリアのメルヘン作家テゲットホッフの作品の翻訳。34のハーブ(香草)の知識に加えて、精密でメルヘンチックな挿絵が魅力的。
 ((有)あむすく 2,600円・税別 A6版190頁)

書名:ふたりのロタ島動物記 オオコウモリ鳥の楽園ガイド
著者:大沢夕志(54高)、大沢啓子

 幻のオオコウモリ・スープに導かれてロタ島を訪れた動物好き夫婦の自然観察旅行のエッセイ。
 (山と渓谷社 1,500円・税別 A5版95頁)

書名:四季の恋の物語
著者:中条志穂(平4仏)、松岡葉子・山岸貴久美との共訳

 フランスの映画監督・脚本家エリックロメールの作品、春のソナタ・冬物語・夏物語・恋の秋、のシリーズ4本の脚本をまとめたもの。
 (愛育社 1,800円・税別 B5版275頁)

書名:成熟のためのこころの名作童話
著者:植西 聰(44経)

 悩みや不安は本人の考え方次第で解消できる、と考える著者が、赤ずきん・白雪姫など10の童話の中にそうした発想の転換のヒントを指摘してみせる。
 (朝日ソノラマ 1,680円・税込 B5判225頁)

書名:トキワ荘実録 手塚治虫と漫画家たちの青春
著者:丸山 昭(28哲)

 講談社に入社したかけ出しの著者が「手塚番」としての悪戦苦闘をへて、若き日の石ノ森章太郎、赤塚不二夫、水野英子などを育て、彼等の夢の砦・トキワ荘をありのままに描いた回想記。
 (小学館 500円 文庫版 242頁)

文集
著者:尾上浩一(35経)

 富士通BSCの社長を勤める著者がまとめた自分史。終戦の年、集団疎開していた著者が両親と交わした手紙。少年期から青年期にかけての作文、企業人としての横顔など。
 (尾上企業出版事業部 私家版 B5版 543頁)