第42回技術交流会

第42回理学部技術交流会のご報告

日時 :平成19年7月28日(土)
      場所 :学習院大学理学部、西2号館503番教室
講演(1) :数学科 中野 伸 教授 15:00〜16:00
演題:「代数体のイデアル類群と楕円曲線」

講演要旨:数論の問題を見通しよく捉えるために整数の範囲を広げると、基本性質「素因数分解の一意性」が一般には成立しない。どの程度成り立たないかを測る尺度が「イデアル類群」だが、それに関する最近の仕事について易しくお話しする。
講師略歴:1957年神奈川県生まれ、1980年学習院大学理学部数学科卒業、1985年学習院大学大学院博士後期課程修了し理学博士学位取得後、本学助手、名古屋大学講師を経て1995年本学助教授、2007年教授、現在に至る。













講演(2) :近藤 英樹 氏(昭和32年物理科"木下研"卒) 16:30〜17:30
演題:「スティルカメラの現状と将来 − フィルムカメラは生き残れるか」

講演要旨:ここ数年の間に、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)やCMOS(Comple-mentary Metal-Oxide Semiconductor:相補性金属酸化膜半導体)などの固体撮像素子を使ったカメラ(いわゆる「デジカメ」)の人気が急激に高まり、その反動として、170年近い歴史を持つ、ハロゲン化銀感光材料を使うカメラ(フィルムカメラ)が絶滅の危機に瀕している。この講演では、なぜデジカメがこのような人気を得たのかという理由を説明し、フィルムカメラに未来があるかどうかということも検討する。
講師略歴:1957年学習院大学理学部物理学科(木下研究室)卒業、1960年同学大学院自然科学科(物理学専攻)修了、1960年財団法人日本写真機検査協会[現(財)日本カメラ財団(JCII)]理事・試験研究部長、日本大学芸術学部写真学科非常勤講師、同学教授(芸術学部写真学科所属)を経て、現在 同学芸術学部写真学科非常勤講師。

講演2.の講演要旨
 ハロゲン化銀を感光材料とする写真(銀塩写真)の歴史は170年近くになるが、ここ数年の間に固体撮像素子(光電変換素子)を使うカメラ(いわゆる「デジカメ」)の人気がプロ、アマを問わず急速に高まり、そのあおりを受けて、 銀塩写真カメラ(ここでは「フィルムカメラ」という)の種類も数も大幅に減ってしまった。
 デジカメが人気を得た最大の理由は「即時性」と、有線、無線の伝送機能だった。写したその場で結果(写真)を見ることができる、その写真をすぐに転送できるという機能はフィルムカメラには考えられない機能である。
 また、ワイシャツのポケットに入るような小さいカメラの、小指の爪ほどの大きさもない撮像素子からの、A4判(210 mmx297 mm)あるいはそれ以上の大きさの(印刷)プリントの画質が、35ミリフィルムからの同じ大きさの(銀塩) プリントの画質に優るとも劣らないという画質の優位性、フィルムカメラに比べてはるかに多い撮影駒数、不要の駒や失敗した駒を簡単に消去できるのでメモリーを無駄に使うことがない、パソコンを使えば画像の加工が比較的簡単に できるなど、デジカメの機能・性能はとうていフィルムカメラが及ばないところまで進んでしまった。
 このような現状を見るとき、果たしてフィルムカメラに未来はあるのだろうかと考える人もいるだろう。一方、いいことずくめのようなデジカメであるが、本当にいいことだけなのだろうか、何も問題はないのだろうか、という疑問を 感じる人もいるだろう。
 これらの問題点についてであるが、筆者は、フィルムカメラ、ことに35ミリカメラの将来については、かなり悲観的である。中判(6×6センチ判、6×9センチ判など)・大判(4×5インチ判、8×10インチ判など)カメラについては、 大きなプリントを作ったときの画質などの点ではまだフィルムの方に有利な点があるので生き残る可能性が高いと思うが、35ミリカメラについては、フィルムカメラがデジカメより優れている点は全くといっていいくらい無いので、仕事に使う カメラとしては、あまり遠くない将来、無くなると思っている。
 デジカメについては、実は、画像の永久保存という面で不安がある。
 デジカメ(の外部メモリー)には、画像そのものではなく、画面のある点の色や濃度といった画像の情報が1とOというデジタル情報(電子データ)で入っているので、銀塩写真と違って、退色や変色がないとされている。このことは 事実であるが、電子データは、記録・読み取りのシステムが変わると前のデータが読み出せなくなるのが普通なので、システムが変わるたびに再保存しなければならない。この"引継ぎ"がきちんと行われないと、画像の再現ができなく なってしまうが、どうなるだろうか。





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