平成11年5月1日発行第74号より抜粋

夢をつむぐオペレッタ

短大最後の卒業式

三角帽子のお屋根の幼稚園舎

新刊紹介


第17回経済学部講演会より
10年11月5日(木)於:記念会館
夢をつむぐオペレッタ
・・・オペレッタは大人の文化・・・
日本オペレッタ協会会長 寺崎裕則氏(31年政経卒)

オペレッタと歌舞伎

 オペラは1598年に、歌舞伎は1602年に東西で期を一にして総合芸術が生まれた。東西の光を当て合うと、オペラも歌舞伎も本質は同じで、表現方法が違うだけだ。それらは、耳と目と心の悦楽がある。特に心の悦楽は、人を感動させることであり、人を感動させることはドラマなのだ。
 歌舞伎は日本の文化の顔である。歌舞伎を追っていくと日本文化の特質が見え、オペラを追っていけばイタリア、ドイツ、ウィーンの文化が見えてくる。特に歌舞性(うたまいせい)の総合芸術を日本人は好む特性がある。
 そこで、私はオペラ・オペレッタも日本の土に根づくのではないかと思い、特にオペレッタを根づかせる決心をした。
 日本には大人が本当に楽しめるものが無い。私は知的大衆娯楽の代表みたいなオペレッタを、日本に大人の文化として育てたいと思い、日本オペレッタ友の会を1977年に作った。

オペレッタの魅力と魔力

 オペレッタは愛の百科事典、恋の展覧会などと言う。
 あらゆる恋愛が出てきて、非常に危険な関係をしながら、最後はちゃんと元の鞘に納まるようにできている。ハッピーエンドに向かって、人々はあらゆる知恵を出していく。一番分かり易くて、楽しくて、面白くてしかも深い。知的大衆娯楽の代表みたいなものだ。オペレッタを見ていると、明日の夢と希望と勇気とエネルギーが湧いてくる。まさに元気印の活力剤なのです。又、ミュージカルの元祖なのです。メロディの宝庫であり、そのメロディがものすごく美しい。何度聴いても何度歌っても飽きないものです。

大人の慰み

 1855年にオッフェンバックによってパリで生まれ、1860年には"恋はやさしい野辺の花よ"の「ボッカチオ」で知られるスッペが、ウィーンで「寄宿学校」を作曲した。やがてヨハン・シュトラウスや「メリー・ウィドゥ」を作ったレハールが出てくる。19世紀末から20世紀初頭はハプスブルブ家が繁栄し没落していき、新しい産業革命によって新興ブルジョアジーが生まれていった。その時代のみんな爛熟した大人の社会が生んだ"大人の慰み"の文化がオペレッタなのだ。
 「濁った水はどんなに浅くても深く見える。澄んだ水は、底が見えるが底の深さは測り知れない。」オペレッタは澄んだ水なのだ。

21世紀はオペレッタの時代

 戦後50年、日本は心を疎かにしてきたので、本物の文化が育っていない。文化は"心の福祉であり精神の糧"なのだ。
 欧州では、文化は生活の中にあり心のオアシスなのだ。1945年ベルリンが破滅した時、一番最初に作ったのが、自分達の小さな掘立小屋と劇場だった。
 芸術家は自分達の心を癒してくれる、夢を紡がせてくれる、明日の希望を勇気を自分達にもたせてくれると思っているからだ。文化は"心の福祉"という考え方で、国家の税金から文化にお金をだすことは、当たり前の事なのだ。一方、日本の欠点は、目に見えないものに対してお金を出さないという事だ。公共投資に何兆円と出しても、文化に対してはお金を出さない。

夢を紡ぐオペレッタ

 心のゆとりの時代、若者が、少年時代に「大人の世界っていいなあ」と思うような、大人の素敵なソサエディが生まれてくれば本当に幸せだなと思う。
 それが国際的な信用に継がると思うからだ。
 21世紀こそ、オペレッタの時代と思い、そうなってほしいと願って、日夜その様な本物を創り続けている。
 皆様、機会があったら、是非良い物を観て下さい。最初に観るものは絶対に良いものでないと駄目です。本物でなくちゃ駄目です。


キャンパス・ニュース・・・・
短大最後の卒業式

・・・使命を全うし、次世代への礎を作る・・・
女子大学教授 湯本和子氏(1回生)

 '99年3月19日、学習院女子短期大学は48回卒業生774名を最後に、1回生以来22,525名の卒業生を送り出し、その使命を全うした。この式場に、1回生を送り出された斉藤道香先生も出席下さったが、感慨深げなご様子であった。私も卒業生の名前を一人一人呼び上げながら、発展的転換ではあっても短期大学の名前が消えて行く淋しさと申訳なさをしみじみと感じていた。
 '52年3月26日、目白の大講義室で、学習院大学文政学部、短期大学部、高等科、女子高等科合同卒業式が行われた。厚子内親王(池田夫人)が短大、皇太子殿下(現天皇陛下)が高等科を卒業なさり、昭和天皇、現皇太后両陛下も御臨席頂いた。私達短大第1回卒業生76名は、女性の礼装であった紺のスーツ姿で卒業する喜びと社会人として出発する緊張感に満ちて出席していた。おもえば半世紀の短大の存在は次世代への礎であった。

・・・学び舎は永遠に・・・
小野寺由里子氏(第48回卒業生)

 平成11年3月19日は、天候に恵まれなかったものの、短期大学最後の卒業生として、無事に卒業式を迎える事ができました。
 私共の短大生活は「雨で始まり、雨で終わる」といった言葉がふさわしいと思います。卒業式では、2年前の期待と不安の入りまじった雨の入学式の記憶がよみがえり、改めて2年間の短さを実感し、ことさら学習院女子短期大学を去りゆくことに言いしれぬ寂しさを覚えました。私共は入学した当初から、短大の「最後」という使命を背負っていました。短大がなくなる事に対して複雑な心境でもありましたが、どの先生方も「短大卒業生として誇りを持ちなさい。そしていつでも胸をはって母校に遊びに来て下さい。」と温かいお言葉をかけて下さり、とても嬉しく思いました。
 女子大学という名称に変わっても、やはり戸山キャンパスが母校です。是非、短期大学の良い面を受け継いで、ますます発展していくことを願っております。

・・・短大最後の卒業式に招かれて・・・
18回生A.T.

 小雨けぶる3月19日、第48回卒業式に、卒後30年の18期生19名が参列させていただきました。
 奇しくも、最後の短期大学生の卒業ということで、喜びの中に一株の寂しさの混じった私達でしたが、鮮やかな彩の袴を着た晴れやかな顔の卒業生と、短期大学の伝統を踏まえて後輩としてしっかり受け継いでゆく、女子大学一期生の力強い送辞を述べる姿に、発展的に改組される現実を実感することができました。列席された満員のご両親方と共に、巣立たれる卒業生に幸多かれとお祝いしました。
 式後、早川東三学長、工藤幹巳先生、斉藤道香先生、岡啓次郎先生との懇談会で、在学当時の思い出を語りながら、最後は女子大学の繁栄を祈りつつ散会となりました。


三角帽子のお屋根の幼稚園舎

 昭和38年に設置されて以来の学習院幼稚園舎が新しくなり、本年2月に昭和寮跡地の仮園舎からお引っ越ししました。
 新園舎は鉄筋コンクリート造二階建約千五百平米で、吹き抜けの玄関ホール中央の大黒柱の上には三角帽子のお屋根が乗っています。一階には年少・年長二組の保育室と二階まで吹き抜けの明るい遊戯室が、二階にはお泊まり保育もできるみんなの部屋と園長室、教員室、保健室などがあります。園庭の周囲には築山のおすべり台、ブランコ、鉄棒などが配置されています。隣接の中高等科校舎がなくなり、とても明るく可愛い幼稚園になりました。


新刊紹介
書名:一週間でわかるJavaScript

著者:福島靖浩(平2心)
 ホームページにインタラクティブな要素を付け加えるスクリプト言語「JAVA Script」。本書では、難解に見える JAVA Script の基本を、一週間のカリキュラム制で無理なく解説。企業ホームページの作成経験豊富な著者が、すぐに使える楽しい例題でちょっと便利なテクニックを紹介します。付録CD-ROMに本書で使う画像などの素材とソースコード、動作確認用のブラウザ(Internet Explore 4.0とNetscape Navigator 4.06)を収録。ハイブリッドでWindowsとMacintoshの両プラットフォームに対応します。
 (2,100円・税別 B5版変型版)

書名:初めて海外からゲストを迎えるときに読む本・・・国際ビジネス入門

著者:山田 修(48国)フィリップスライティング(株)代表取締役社長
 国際ビジネスの発展と普遍化で以前では考えられなかった部門の人や職位の人たちが日本で海外からのビジネスパーソンと会う機会が増えている。ゲストの来日から商談の成立まで、実践に役に立つ作戦が具体的に書かれている。
 ((株)アルク 1,480円・税別 A5版237頁)

書名:家族崩壊・・・ひとは独りでは生きられない

著者:久保田信之(34政経)学習院女子大学教授、東京家庭裁判所家事調停委員
 今「家庭」「家族」はいったいどうなってしまうのか? ドッキリするような、でもそれが現実であるいろいろな例をあげて分析研究されています。どうしたら良いか真剣に考える起爆剤になってほしいと切に願って書かれた本です。
 (日本教文社 1,762円・税別 B5版279頁)

書名:おじいちゃん戦争のこと教えて・・・孫娘からの質問状

著者:中條高徳(27政)
 父親の転勤でニューヨークで高校生活を送っているお孫さんから来た手紙、それはアメリカ史の授業の中で戦争体験のある方に話を聞こうということになって出た16の質問状でした。陸軍士官学校出身の著者が孫娘に率直に真摯な姿勢で答えてゆきます。
 (致知出版社 1,400円・税別 B5判258頁)

書名:チンチン コバカマ

著者:久高明子(36哲)
 退職を機に教職に在った間に書きためた童話の中から10編をまとめたもの。この本の書名になったチンチンコバカマという妖精たちの作品は最後の卒業式の出来ごとが妖精たちによって描かれている。
 (新風舎 1,200円・税別 B5版 95頁)

書名:蘇る中世の英雄たち・・・「武威の来歴」を問う

著者:関 幸彦(50史)
 伝説化した英雄・・道真、将門、田村麻呂、頼光、為朝、義経・・をとりあげ、歴史上は敗者とされた武人が伝説を介して歴史に蘇る過程を近世江戸期の文芸作品の中でどう扱われているかを探る。
 (中央公論社 660円・税別 中公新書 212頁)

書名:ちょっと言いにくいことですが。・・・体験的地方自治

著者:森 昌也(6高文甲卒)
 著者は東大を経て静岡県島田市の市議・議長・市長・県議と政治の要職を歴任した。
 「地方議会は少数精鋭でなくてはならない」「地方自治行政は納税者の側からものを見よ」など、地方自治について的確・簡潔な発言が盛られている。
 (静岡新聞社 2,000円・税別 B5版 223頁)

書名:もうひとつの聴診器

著者:佐藤 蕃(24旧高)
 著者は医者であり、故星野立子に師事した俳人でもある(曽々祖父は順天堂創始者)。八丈島での患者との心の触れ合いが感動的に描かれており今様「赤ひげ」といったところ。50余年にわたる句作の成果も披露されている。自家本ですが寄贈を受け事務局に備え付けてありますので是非一度ご覧ください。
 (六甲出版 B5版 352頁)