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医歯薬桜友会会員の著書 澤口聡子(昭和53女高)

題名 乳幼児突然死症候群—病態生理の視点から

 



この本は、当初、ベルギーのブリュッセル自由大学付属小児病院で、sudden infant death syndrome(SIDS)の生理学的なprospective studyを世界で唯一成功させた故Andre Kahn教授の追悼の目的で企画されたものである。Kahn教授がなくなられたのは、1994年9月であり、既にそれから長い月日が経過したが、この度、Springerから論文集が刊行されるようになったことは、非常に喜ばしいと同時に、この分野への学術的な貢献度も高いものと考えている。

この本には、SIDSに関する6論文と、赤ちゃん学baby scienceに関する2論文が納められている。

SIDSに関しては、Kahn教授の仕事を実質的にすすめ、牽引したPatricia Franco教授が、Kahn教授の仕事を集大成し、さらにそれを超える内容の3論文を寄せている他に、日本から3論文が寄せられている。小児の睡眠の専門家でありSIDSに造詣の深い神山潤先生と、 SIDSの神経病理を長年に渡って研究してきた小児神経病理学の専門家である小澤愉理先生がそれぞれ独自の視点からの論文をよせ、更に私自身が小児法医学・小児社会医学の視点から、Kahn教授と共同研究結果をまとめた内容を本書において、発表した。

赤ちゃん学baby scienceは、子ども学child scienceとともに、日本で生まれ、発展してきた学問であり、脳科学brain scienceを手段とするものである。この赤ちゃん学の治験や成果が、今後SIDSの研究領域にも応用され寄与する可能性を考慮して、この本の末尾に、将来性を示唆するものとして、関連論文2報を納めた。

この書籍は、SIDSの専門書であるが、国家や学問の専門性の境界を越えて、複数の方法論と、複数の視点から、「痕跡を残さない小児突然死」という未知の現象をみつめようとした記録である。小児科医にも、生理学者にも、病理学者にも、神経科学者にも、法医学者にも、脳科学者にも、興味深く読まれ得る内容となっている。更に、この書籍が、医学をも超えて、生命現象の基盤にあるからくりに近づく道標となり得ることを望むものである。

澤口聡子(昭和53女高・慶應大学院医学研究科卒) 帝京平成大学地域医療学部教授