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第20回経済学部会講演会

第20回
経済学部会
講演会
最近の金融経済情勢
賀来 景英(昭和32中年)(株)大和総研副理事長
平成13年11月19日(月)於 記念会館

テロ事件とグローバリゼーション

 グローバリゼーションは、人・物・金が国境を越えて活発に動く状態を言う。昨今、この言葉が安易に使われ過ぎているきらいがある。19世紀末の方が、今よりグローバルな時代であって、例えば海外投資等は、本国対植民地という相違はあるが、当時の方が活発だった。一方、米国の今までのグローバリゼーションと称するのは、米国の支配、米国を中心とするものであった。テロはこれに対し、大きな疑問を投げかけた。米国の独り善がりに、非常に極端な形で反動が示されたものと思う。米国は一人では戦えないので中国、ロシア、パキスタンまでも巻き込む形で包囲網を作って、米国を中心とする反テロのネットワークができつつある。これはある意味で、米国の独り善がりが修正されつつあるのかもしれない。

 背後にパレスチナ問題があるとすればそれに対して、最大の責任を負うべきは英国である。世界大戦中、ある土地をユダヤ人にはあなたのものと言い、アラブ人にはアラブ人のものと言った。それがイスラエルという国を造った。世界には、パレスチナ問題のほか、貧富の差の問題、地域的問題、資源問題等、大きな未解決の問題がある。今まで大国主導の下で、なおざりにされてきた問題が、先鋭的な形で突きつけられたところにテロ事件の最大の意味がある。

不良債権と構造問題が最重要だ!!

 今の日本経済は、単に不良債権だけが片づいても、銀行の貸出しが増えて、経済が目に見えて元気になることはない。

 不良債権問題の主犯は97年の金融不安山一證券、拓銀など大型金融機関の破綻だ。金融問題は一種の癌であり、自然治癒はない。金融不安という地雷源は今も存在し続けている。

 日本で一番ダメな産業は、金融と農業だ。日本で最も保護されているという事は、当局の干渉も受けるという業界であって、多年保護されてきた産業は必ずダメになる。金融不安の裏側には、過剰債務の不良企業があって、その企業が安売りをするので、同業他社は経営が苦しくなる。過剰供給が解消されないという問題がある。マイカル、ダイエーは典型だ。

 次の構造問題は規制の過剰の問題だ。公共部門がのさばり過ぎて、民間の商売がしにくくなっている。財政、年金、社会保障等将来の展望が描けなくなっているから、将来に対するものの見方が不確実で不安を呼んでいる。政府、当局は、自ら引き受けてヤルという決意をし、規制を含めた公共問題のあり方を考え、政府がやれることは確実にする事だ。正攻法はものすごく時間がかかるが正攻法しかない。
(文責 江島・南坊)